澤田瞳子のデビュー作。
藤原仲麻呂権勢、阿部上皇(孝謙天皇)の時代。遣唐使をめざして大学寮に学ぶ少年、奴隷の青年との友情と離反など。
身分格差の問題は『満つる月の如し』にもあったが、時代劇学園物だった上巻の後半、きなくさい政争に巻き込まれて、大学寮の自治が危ぶまれる。
全共闘世代の大学紛争や、昨今の高学歴での就職難などがオーバーラップする。著者が院卒だからこそ書ける話。
登場人物の凡ては決して善人ではなく、それぞれが過ちを犯しつつ、最後に義のために戦う。ある者は武力で、ある者は知恵で。
斐麻呂の初志が潰えたかに思えたところで、あのラスト。友の志を継いだ赤土の姿に涙する。
此の作家はまるで,その時代にまぎれこんだかのような描写がたくみ。そして群像劇がうまい。一気読みした。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2015年7月2日
- 読了日 : 2015年7月2日
- 本棚登録日 : 2015年6月28日
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