孤鷹の天 下 (徳間文庫 さ 31-6)

著者 :
  • 徳間書店 (2013年9月6日発売)
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感想 : 11
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澤田瞳子のデビュー作。
藤原仲麻呂権勢、阿部上皇(孝謙天皇)の時代。遣唐使をめざして大学寮に学ぶ少年、奴隷の青年との友情と離反など。

身分格差の問題は『満つる月の如し』にもあったが、時代劇学園物だった上巻の後半、きなくさい政争に巻き込まれて、大学寮の自治が危ぶまれる。

全共闘世代の大学紛争や、昨今の高学歴での就職難などがオーバーラップする。著者が院卒だからこそ書ける話。

登場人物の凡ては決して善人ではなく、それぞれが過ちを犯しつつ、最後に義のために戦う。ある者は武力で、ある者は知恵で。

斐麻呂の初志が潰えたかに思えたところで、あのラスト。友の志を継いだ赤土の姿に涙する。

此の作家はまるで,その時代にまぎれこんだかのような描写がたくみ。そして群像劇がうまい。一気読みした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2015年7月2日
読了日 : 2015年7月2日
本棚登録日 : 2015年6月28日

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