落語の笑いのツボの一つに「パロディ」がある。誰もが高座にかけるようなポピュラーな噺の中の 1フレーズを、マクラや他のネタの中に挟み込むと、知っている人には大ウケだが、知らない人にはてんで判らない、奇妙なクスグリになるのだ。もちろん、万人が判るように解説してしまってはパロディの面白さが台無しなので、「判る人にだけ判る笑い」というところに面白みがある。
『らくご小僧』は、志らくが幼少期から談志入門直前までをエッセイ風に書き綴りつつ、一篇一篇にそんな落語のパロディを挟み込んだ一冊。もちろん、落語ファン以外にも判り易いように、「なんという噺の、どういう場面」という解説を逐一入れていて、そこを無粋と取るか、一般読者向けなので仕方がないと取るか。師匠の談志はよく、「落語やってると、世ン中だいたい判っちゃうんだよね。何を見ても、『ああ、これは反対俥のアレだな』とかね」と語っていた。談志は「こんな抽象的なこと言われても何のことだかわかンねェだろうけど」と続けたが、しかし、そんな師匠の言葉を、志らくが見事に具現化してみせた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
エッセイ・随筆
- 感想投稿日 : 2015年4月12日
- 読了日 : 2015年4月12日
- 本棚登録日 : 2015年4月12日
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