舞台は 19世紀末のニューヨーク。レストラン経営で成功を収めたマーティン・ドレスラーは、かつて自身がベルボーイとして働いていたヴァンダリン・ホテルのオーナにまで登りつめる……と、ここまではアメリカン・ドリームを体現した少年の伝記的小説にも読めるのだが、ドレスラー自身が構想したホテル「ザ・ドレスラー」あたりから物語は徐々にミルハウザー・ワールドへ。3建目のホテル「グランド・コズモ」に至っては完全に虚実が入り交じり、並列して描かれる結婚生活とともに、夢とも現ともつかぬ物語に変遷する。
19世紀末から20世紀初頭のニューヨークの微細な描写も素敵だが、何といっても白眉は『バーナム博物館』を彷彿とさせる 3建のホテル。訳者の柴田元幸が「境目がない」と評した通り、ごく普通の小説を読んでいたはずなのに、いつの間にかミルハウザーの幻想世界へと引き擦り込まれている感触も良い。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2013年11月24日
- 読了日 : 2013年11月24日
- 本棚登録日 : 2013年11月24日
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