さっさと不況を終わらせろ

  • 早川書房 (2012年7月20日発売)
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日本同様に「流動性の罠」にハマった米国に対し、クルーグマンがより高いインフレ・ターゲット導入と大規模かつ長期的な財政出動を緊急提言する一冊。原著は 2012年 4月だが、その後再選を果たしたオバマ大統領と、この本の中でも散々苦言を呈されている元同僚バーナンキ FRB 議長は、依然として高い失業率と 0% 金利による流動性の罠に苦しんでいる(まあ、株価は絶好調だけど)。

一方、日本は、訳書が出た当時はまだ政府と日銀が協力して日本を地獄の底のその更に下へ突き落とそうとしていた矢先であったが、クルーグマンと同じ理論を展開する浜田宏一の内閣官房参与就任などもあって、ようやくまともな金融・財政政策が取られそうな雰囲気である。という雰囲気だけで、すでに成果が上がっている状況ではあるが、ぜひ今後も具体的な予算によって、不況下における金融政策と財政出動のモデルとなるような成果を残してもらいたい。

翻訳は「クルーグマン教授の経済入門」で一早くクルーグマンを日本に紹介し、その後もエッセイなどの翻訳、ウェブ公開を手がける山形浩生さん。訳者解説で、今やノーベル経済学賞受賞者になってしまったクルーグマンに遠慮してか「多少普通の訳文にしてみた」とは書いているが、軽妙洒脱な筆致は健在。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス・経済
感想投稿日 : 2013年2月24日
読了日 : 2013年2月24日
本棚登録日 : 2013年2月24日

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