主人公は酔夢の中で、自分自身を文学的な人=夢と現のあわいをいったりきたりする=小説の中に生きる人と位置付ける(谷崎潤一郎に語らせる形で)。小説の中に生きるということは現実の人生をコントロールできないということに繋がり、主体性がなく人に頼って暮らすということになるわけだ。
谷崎潤一郎の”家族王国”をメタモチーフとして用いるこの本では、谷崎が家族たちを小説のネタにする罪深さと、私たちが実在の人物を虚構のキャラクターとして消費する罪深さを2重に感じさせる仕掛けになっている。さらに谷崎ほどの文豪になら主人公のように物語に消費されてもよいかもしれないというほの暗い喜びを堪能できる。
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- 感想投稿日 : 2017年10月3日
- 読了日 : 2017年10月2日
- 本棚登録日 : 2017年6月25日
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