中盤あたりまで「どうせ傲慢な独裁者が世間の実情を知ってわざと捕まって自分にかけられた懸賞金を貧しい誰かにあげるんでしょ」と思っていたけれど、そうはならなかったので一安心。「独裁者」は民衆の心を掴んでいるうちは「救世主」なのだな、としみじみと感じた。独裁者は独裁者の役割を果たしているうちに感覚が麻痺してしまうのだろうか。役割を演じることの恐ろしさ。元陛下が何を感じてどう思ったのかは明確にされないけれど、それは同時に観客に想像の余地が与えられているということだと思う。自分なりに解釈していく映画というか。最後のシーンで元陛下の殺し方云々で揉める人間たちに民衆の最たる部分が現れている。身勝手で移り気で扇動されやすい!本当ならあの場で元陛下を庇った青年は「まず俺の首を落とせ」と言った時点で殺されていたんじゃないのかな。諸悪の根源が見つかったというのに人々が熱狂しない訳がない。さっさと元陛下も孫も青年も殺されておしまい、とならないのは都合が良すぎる気もする。でも一連の台詞と行動はとても格好良い。暴徒に立ち向かうたった一人の人間の精神的強さ。クラレッタのスカートを直しに行くようなものだ。ラストが明確にされていないけど斧の持ち方、力の入れ具合でなんとなく分かってしまうような演出。ずるい!一方では一番初めに元陛下が革命を防ぐためといって16歳の少年を処刑したこと、それがラストに繋がるという見方もできる。民衆は再び独裁政治が台頭することを恐れて孫も殺してしまうような最後なのかもしれない。これが一番現実的な気もするし、観る人の解釈、人間の本性の捉え方によってラストについての考えも変わってくるんじゃないか。
- 感想投稿日 : 2016年7月13日
- 読了日 : 2016年7月13日
- 本棚登録日 : 2016年7月13日
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