読みだすと止まらない、黄色人種、且つ男性、だからこそ描ける残忍非道で嗜虐的な愉快爽快なストーリーが魅力的。新たな世界観、が単純、だけど妙に入り組んで居て、読みやすく面白い。サディスティックとマゾヒスティックが混在した、超越した展開での心理描写。憧憬等ではなく、客観的に視て愉しい世界は斬新なものを想わせる。活字であるからこそ、心理描写として読む事が出来るからこそ、堪能できる官能。
誰もが持つ、潜在的な嗜虐嗜好―其れは至極、当然な。
繰り広げられる、新たな展開が気に成って仕方ないのです。
…密に未来の国際情勢がクララに依って変えられるのでは無いか、と想ったりも。謂わば、未来へ彼女が行った事に依り、その未来が創られる、過去でのきっかけと成る様な。
唯文体・展開性は、ドグラ・マグラの其れよりも単純で在りながら説明的過ぎるのは、好きではない様な…。
差別と特定の人種の保護・平和の維持の観点は、現代におけるひとつのグループ(小さなものでは学校でのグループ、大きなものでは宗教、等)が其れ以外を排他しようとし、侮蔑する事により、其のグループ間での平和と人格の尊重が維持され得る事を暗示して居る様にも想える。
その辺りの矛盾と、現世社会との矛盾を、ナチス政権・白と黒(黒人差別)の観点と対照させてみるのも面白いかと、想ったりして居る。
しかしこれは現実問題の提唱の様にも想う。日本人が白人の国、謂わば先進国に利用される事になる、という事実を、戦後の状況下から見据えて居たのかもしれない。
中々に面白い本だった。 中・下巻が楽しみだ。
- 感想投稿日 : 2010年10月15日
- 読了日 : 2010年11月4日
- 本棚登録日 : 2010年11月4日
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