とりかえ・ばや 1 (フラワーコミックスアルファ)

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hibiki-cさん 小学館 flowers   未設定

【デザイナーメモ】12月なかば、装画のアイディアを5案ほど描いた依頼書を送信。翌日出版社のパーティーでさいとう先生にお会いしたときは「私、こういうのそのまま描いちゃいますよ」とおっしゃっていた。ところが数日後のクリスマスに編集部から回ってきた作家さんからのfaxは、どれも全然違う構図で、しかも「ごめんなさいね、あなたの案の通りやっても全然駄目だと思うの。でも、つまりこういうことがやりたいんでしょう?」という素晴らしいスケッチが3案だった。その通りでございます、ということで、あとはお刺身よろしく盛りつけてお出しするにつとめた。こういう仕事ができると気持ちがいい。

(「あなたの案の通りやっても」云々は実際にそう書いてあったわけではなく、近田が勝手に読み取ったメッセージです)

大作家さんが日本の古典『とりかへばや物語』に「萌え」と「トランスセクシャリティ」という同時代的な視点を持ち込んだ野心作。考えてみればさいとう先生の作品で初めて読んだのは『花冠のマドンナ』で、これも男装を扱う作品だった。

デザイナーから送信した最初の装画依頼書には「……トランスセクシャリティとナルシシズムというテーマを〈スキャンダラスに〉読者に見せたいと思います。さいとう先生のスキャンダルと上品さ、神々しさを同時に描くことのできるワザで……」と書いてある。例として描いたスケッチでは、スキャンダラスさを強調するために烏帽子(元服前なので本当はかぶらない)をかぶせたり、参考としてクリムトの「接吻」やら「愛の嵐」やらの図版をつけたりしていた。で、最終的に上がってきたのがこのカバーイラスト……。「全然違うけど、まさにその通り」という絵で、本当に脱帽するしかない(烏帽子だけに)。あとで人づてに、作品立ち上げ時の担当で異動後にベツコミ編集長になったY縣氏が「こういうことをやりたかったんだよ」とおっしゃったと聞いてとても嬉しかった。

(なお採用しなかった案も含めたさいとう先生のラフ案は、カバーをめくった本体表紙部分に使わせていただいている)

さいとう先生の色遣いはどこかチョコレートを思わせるところがあるので、とろっとした赤金(DIC-619)の特色はとても相性が良かった。これはTOYOの赤金と比較のうえでDICに。帯は以前にも別の本で使ったことのある透け感のある紙で、シーツでくるむようにして裸体の過半が隠されるようになっている。店頭で「邪魔」「デザイナー余計なことするな」「早く買って帰って剥がしたい」と読者に思ってもらいたい。

だいぶあとになって気づいたのは、自分の念頭には最初から『日出処の天子』文庫版1巻のデザインがあったのだなということ。たぶんこれは羽良多平吉さんじゃないかと思うのだけど、自分なりの「違うけど、その通り」になったのではないかと思う。(カバー、表紙、帯、総扉、目次その他を担当)

レビュー投稿日
2013年3月9日
本棚登録日
2013年1月23日
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