ジャイロスコープ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2015年6月26日発売)
3.26
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感想 : 720
3

よかった編
「一人では無理がある」
「嘘のようなホントの話」っぽい結果オーライ。子どもを守る母親の踏ん張りは、足が本当震えて動かせないのに頭がのぼせるような殺気で、自分の時の感じを思い出した。プラスドライバーの男の子が鎖を外せた後、親身になってくれる大人の元へ辿りつけることを切に願う。

「if」
文字だからこそ騙される。これも「嘘のようなホントの話」っぽい。男は誇り高き生き物。これが女性の話だったらまた全然違うコメディになりそうかも。

それなりの編
「彗星さん」
まっとうに仕事をすることの大事さと、仲間内のおしゃべりと、きっぱりした鶴田さんはいいと思う。
ただし人生車両の妄想は、他人が型に嵌めるもんじゃないし、悪気は全然ないけど、悪気なくかわいそうがる感じがちょっと…鶴田さんのことは鶴田さんにしか分からんじゃん!と思うのは読む方の性格が悪いせいかしらん。

いまいちの編
「浜田青年ホントスカ」
浜田青年の告白に、こっちも「1編目からこんなスカ?」と言いたくなる。仕事だからで押し通す相手も相手だけど「そこを何とか」となったのか、ならなかったのか。もうちょい相談屋さんの生身っぽい心情がないと消化不良でもやっとする。

「後ろの声がうるさい」
互いに正体を明かさず、でも会えてよかったという短い合い席。それだけに集中してくれればよかったのかなとも思うが横からチラチラ他の編の人が顔を出して、佳境のドラマの画面上でずーっと関係ないテロップが流れてる感じで気が散って勿体ない。

良くなかった編
「ギア」
小さい王蟲の群れを想像すればいいのか。シュルレアリスティックな悪夢だけど、これって何??小説??

「二月下旬から三月上旬」
難解、というか種明かしをされても本当の所が分からない。「キャプテンサンダーボルト」の腐れ縁コンビから背骨を抜いて2,3日放置した残骸みたいな味わい。

総評
前々から思ってたけど、時間軸と人物相関が行ったり来たりする話って苦手だ。じゃあ伊坂作品読めないじゃんてなるんだけど、全く読まないのも物足りなくてやっぱり読んでしまう。巻末インタビューで作者の悩みみたいなのがあって作家は作家で悩ましいと思ったけど、読者は読者で悩ましいんだ。好みじゃないのが入ってるの前提で好きになれそうなタイトルメインに消化していくしかないのかなと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2015年8月10日
読了日 : 2015年8月9日
本棚登録日 : 2015年8月9日

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