生活保障 排除しない社会へ (岩波新書 新赤版 1216)

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  • 岩波書店 (2009年11月21日発売)
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雇用と社会保障を結び、社会的包摂を目指す論調は新鮮。考える土台とすべき統計データとこれまでの施策が豊富に紹介されている。

しかし、雇用に関して世界が同時に行き詰まっているからか、決定打となる政策集を描くことに成功しているとは言い難い。示唆はあるのだが。

本書の範囲を超えるが、働くことの意義を深める必要性を感じた。

・パート・アルバイトの21.9%、派遣労働者の17.2%が配偶者の厚生年金を含めていっさいの公的年金に加入していない(平成18年版労働経済の分析)
・日本の失業者の内、失業手当を受給していないものは77%、アメリカは59%、ドイツ6%と大きな差がある(ILO、2009)
・国民健康保険は低所得者の加入者が多いほど保険料が高くなる。寝屋川市の場合、世帯所得200万円の4人家族の保険料は全国トップの年間約50万円(2008年毎日新聞)
・生活保障は所得保障ではなく、人びとが他の人びとと結びつくことを可能とし、生きる場を確保する見通しを提供できるものでなければならない。
・P19,日本人が信用する対象:1.家族、2.天気予報、3.新聞。スウェーデン人:1.医療、2.警察、3.大学
・政府に対する信頼の強さは、市民相互の信頼の度合いに比例する。
・所得制限などをせずに全ての市民に提供される普遍主義的な社会保障や公共サービスに接するとき、政府と他の市民に対する信頼が高くなる。
・子ども手当は家計に一息つかすことはできるが、保育サービスなど就労支援などと一体化して、雇用拡大につなげなければ財源を確保できない。
・今だけでなく将来に向けた安心とリンクしなければ、現金給付は預金に回る。
・広範な権利保障を主張する陣営に限って、国家権力の縮小を求める傾向が強かった。
・初めてついた仕事が非正規であった男性は1982年から5年は7%だったのに、2002年から5年は31%に。
・1968年の永山事件は社会からの差別的なまなざしが彼の自由を奪ったが、秋葉原事件はまなざし不在の地獄の中でおこった。
・スウェーデンでは1971年に所得税を夫婦合算非分割の世帯単位の課税から個人単位にして、女性の就労を促した。
・教育休暇制度
・日本では現金給付というと就労意欲をそぐと言われているが、スウェーデンでは、頑張って働けば賃金が上昇し、社会保障給付も上昇する。
・日本の最低賃金はOECDの中でも低い。フランス60.8%、イギリス41.7%、アメリカ36.4%、日本は32.9%がフルタイム平均賃金に対する最低賃金。背景は男性稼ぎ主が中心ということ。
・第6次産業
・参加支援は翼の保障。日本型の殻の保障ではなく。
・ドイツの育児休暇中は所得比例型の手当。出産、育児と就労、キャリア形成をともに奨励していることになる。
・日本の生活保護自立支援プログラム:140万人の受給者。プログラムの対象者5万6000人。実際の支援開始7300人。就職者3000人。
・日本では事業主の社会保険料負担が相対的に小さく、GDP比で、4.5%(2002年)。フランス11.4%、ドイツ7.3%。
・「貧困はなぜ生じるか」日本では、社会の不公正が原因と答える人の割合がOECDで一番小さい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本<福祉・医療>
感想投稿日 : 2015年1月20日
読了日 : 2015年1月20日
本棚登録日 : 2015年1月20日

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