金子光晴の全小説7編を収録。戦後間もない東京の風土を舞台に、身を持ち崩した人間の刹那的感情と、死へと棚引く霧靄の如きロマンチシズムがねっとりと絡む。知っての通り金子の日本語は超絶に美しい。特に表題作においてはこの世のものとは思えぬ妖艶色めく言葉が寸断なく連なり、魔物に魂抜かれたような気怠さが残った。辞書によると「尸解」とは《人がいったん死んだ後に生返り離れた土地で仙人になること/死体を残して霊魂のみが抜け去るものと死体が生返って棺より抜け出るものとがある》とあり、いかにも金子は仙人の風体だと得心した次第。
戦後の国民の、手の平を返した民主主義の流行をユーモア散りばめ揶揄しているのがまた金子らしい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2016年2月20日
- 読了日 : 2016年2月20日
- 本棚登録日 : 2016年2月20日
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