気怠い日常の狭間で、身と心をだらだらと持て余しながら読む。意味を攫むには難儀なテキストの集成であるにも関わらず、水の流れに身を寄せるように揺蕩う、静かで密かな快楽に浸る恍惚が訪れる。やがて水は澱み、ねとりと纏わりつく淫靡な不快が押し寄せる。その密度に身が蕩けだす。薄いヴェールに透かした鈍い光に包まれる。どこに連れていかれるのかわからないし、わからなくていい。抜け出せない迷宮を足掻いて彷徨うのなら、終わりのない循環にただこの身を任せて流れ続ける惰性の快楽に溺れたくなる。金井美恵子を読むと必ず陥る囚われの罠。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2015年8月18日
- 読了日 : 2015年8月18日
- 本棚登録日 : 2015年8月18日
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