これに、どんな感想を書けというのだろう。もちろん、プラスの意味でだ。
非科学的な要素は用いられていないはずなのに、どうしてこんなにも不思議で不可解で謎めいたファンタジーのような世界が描けるのだろう。
回りくどい、形式ばっている、堅い、そう感じる描写はほとんどないのに、物語全体に重厚感を感じる。文庫ではなく、ハードカバーで読めばよかったと思うほどに。
最初は、こんな世界観でおもしろくなるんだろうか、なんでこんなにも多くの人に読まれているんだろう、と思いながら読んでいた。導入部は理瀬の過去の様々な途切れ途切れの回想があり、それがなんとも、暗く、取っつきやすくない感じだったからだ。どうやってただの学園物語でこれらの回想のようなミステリアスな展開にしていくんだろう、と訝しんでいたけれど、読み進めるうちに、すぐにそのミステリアスな物語に引き込まれていった。
ただ、理瀬が後半どんどん鬱のようになっていくのには、少し違和感を覚えた。十五章あたりからがやや急に思われた。確かに最初から気弱そうなキャラクターではあったが、校長の親衛隊に何度かいじめを受けただけで、そこまでどんどんとふさぎ込んでいくだろうか? いや、謂れのない嫌がらせを受け、あんな陰鬱な学園帝国に捉われていれば、鬱にもなろうが、もう少しそういった描写がしっかりしていてもよかったかなと思う。
最も違和感を覚えたのは、理瀬がハロウィンの日が臨界点になるだろうと予測する部分。何故、そういう予感がするのか、何故周りもそういうふうに感じているのか、が読み取れない。そして、もちろん、実際その予感は的中するのだから、もう少し説明か布石が必要ではないかと感じた。
終章は怒涛の展開だったが、それに関しては違和感はなかった。むしろ、その疾走感が必要だったのだろうと思う。理瀬の素性が分かった時は、まさか、と思うと同時に、道理で、と思った。まさに言われてみれば納得がいく、という展開だった。
著者の創り出す世界観はすごいな。こんなふうに自分のなかで世界を創り込み、表現してみたいものだ。
- 感想投稿日 : 2016年3月19日
- 読了日 : 2015年11月
- 本棚登録日 : 2016年1月24日
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