勝田光の本棚»
聴いた音楽、観た映画、読んだ小説、学習・研究のために読んだ本の記録として使っています。
レビュー by hkatsutaさん
引用
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「優れた詩というのは、多かれ少なかれそういうものだからね。もしそこにある言葉が、読者とのあいだに預言的なトンネルを見つけられなかったなら、それは詩としての機能を果たしていないことになる」(改行)「でもそういうふりをしているだけの詩もたくさんある」と僕は言う。(改行)「そのとおり。そういうふりをするのは、コツさえのみ込んでしまえばむずかしいことじゃないからね。それらしく象徴的な言葉を使えば、いちおう詩のように見える」
― 32ページ -
「もちろん」と彼は言う。(中略)「どうしてもちろんななの?」と僕は尋ねる。(改行)「誰もが恋をすることによって、自分自身の欠けた一部を探しているものだからさ。だから恋をしている相手について考えると、多少の差こそあれ、いつも哀しい気持ちになる。ずっと昔に失われてしまった懐かしい部屋に足を踏み入れたような気持ちになる。当然のことだ。そういう気持ちは君が発明したわけじゃない。だから特許の申請なんかはしないほうがいいよ」
― 149ページ -
「うん。僕も不自由さが好きだ。むろんある程度までということだけどね」と大島さんは言う。「ジャン・ジャック・ルソーは人類が柵をつくるようになったときに文明が生まれたと定義している。まさに慧眼というべきだね。そのとおり、すべての文明は柵で仕切られた不自由さの産物なんだ。もっともオーストラリア大陸のアボリジニだけはべつだ。彼らは柵を持たない文明を17世紀まで維持していた。彼らは根っからの自由人だった。好きなときに好きなところに行って好きなことをすることができた。」
― 190ページ -
「僕はいったいどうすればいいんだろう?」と僕はたずねる。(改行)「なにもしなければいい」と彼は簡潔に答える。(改行)「まったくなにもしない?」(改行)大島さんはうなずく。「だからこそこうして君を山の中につれていくんだ」(改行)「でも山の中で僕はなにをすればいいんだろう?」(改行)「風の音を聞いていればいい」と彼は言う。「僕はいつもそうしている」
― 234ページ -
大島さんはうなずいた。「もちろん」と彼は言った。「そういうことはあります。何かを経験し、それによって僕らの中で何かが起こります。化学作用のようなものですね。そしてそのあと僕らは自分自身を点検し、そこにあるすべての目盛りが一段階上にあがっていることを知ります。自分の世界がひとまわり広がっていることに。僕にもそういう経験はあります。たまにしかありませんが、たまにあります。恋と同じです」
― 330ページ






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