佐藤優の「地政学リスク講座2016」 日本でテロが起きる日 (佐藤優の地政学リスク講座)

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  • 時事通信社 (2015年11月27日発売)
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 今年、東海道新幹線の中で起こった焼身自殺、犠牲者を一人巻き添えにした事件はテロの新しい形だと思った。

 村上龍「オールドテロリスト」では、殺人をそそのかされた若者が町で殺人を実行したのちに自殺する。そんな事件が多発する日本を描く。

 現に秋葉原の歩行者天国にトラックで突っ込み、包丁振るって何人も殺した奴がいたのは記憶に残る事件だった。

 放っておかれる日本の貧困、抑圧されるままにされると人は自暴自棄になる。

 幸せとか何か、そんな簡単な問いへの答えも持たないまま時間だけが過ぎて絶望と鬱屈だけが渦巻いている。

 地政学リスクに加え、世界的に自国民によるテロに怯える未来にはなってほしくないものだ。


 さて、日本でテロが起きる日と題した本書では巻頭に以上の自国民によるテロのリスクが示されているが、全体的には世界の地政学リスクについて書かれている。

 やはり最近の話題であるISについて、そして最近忘れられているがロシアとウクライナの関係についても書かれている。


 この中で気になる記事は日本における地政学リスク、沖縄の基地問題についてだ。

 基本的の俺の立場は反中央、反東京なので、この問題に対しては東京の沖縄に対する上から目線がすげぇムカつくのだ。

 あんな小さい島に日本の75%の基地があることが、まずおかしいと思わないのか?

 それを「日米が合意したことですから」と原則論で、政府と県が双方に裁判所に訴える事態になっている。
 
 それは司法が解決する問題ではないだろう。

 日本には無人島なんていくらでもあるし、わざわざ辺野古を埋め立てて新しく滑走路を造るんだったら、無人島に基地作っちゃったほうがいいんじゃない?


 なんで沖縄にこだわるのか。先日読んだ本だと、韓国からもフィリピンからも追い出されたアメリカ軍を唯一迎えているのが日本だから。

 しかも、沖縄のリゾート暮らしが兵士にとって心地よいから。なんだってさ。

 確かに、去年の年明けに自転車ツーリングで沖縄一周したとき、北端のやんばるあたりをバイクで爆走していたアメリカンは楽しそうだったからな。


 あとは沖縄にこだわるのは、辺野古に核兵器があるのか。もしくはあるとフリをするためか。

 福井晴敏の亡国のイージスの三部作の始まりは、辺野古で起きた謎の爆発事故が始まりだった。

 核兵器がある、もしくはあるように見せかけるために辺野古でなければいけないのかもしれない。


 但し、このままの状態だと沖縄と政府の対立は深刻化するばかりだ。

 翁長知事は基地反対で政府と対立しているが、知事は抑えになっていると思うのだ。

 裁判所も政府の意向通りで辺野古の埋め立ては止まらないと思うが、翁長知事の抑えがなくなったときに反対運動が過激化しないといいのだが。


池上永一のテンペストでは琉球処分についてよくわかる。タイミングが外れていれば沖縄は中国に付いていてもおかしくなかった。

沖縄は無理やり日本に併合されたという事実があり、400年過ぎてもこの問題が尾を引いている。


東京という中央は地方に対しての上から目線を止めることがない。

日本の地政学リスクはじわじわ広がる地方のルサンチマンから生じることになりそうだ。


本当の異常時に、日本の対処能力が低いということは大震災で露呈された。

リスクを一つずつ潰していかなくてはいけないのに、そのリスクを増やしていってどうする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2015年12月27日
読了日 : 2015年12月25日
本棚登録日 : 2015年12月25日

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