裏表紙の折り返し(・・・正式名称は違うよね・・・)によると、著者は「元・書店員」とのこと。
うん・・・。わかる・・・。
本気の書店員が本気で異世界へタイムトリップする本やった。
この手の異世界ものはここんところいくつも読んでるけれど(「入れ代わり」とか「異世界カフェ」とか、その他もろもろ)、これはこれで毛色が違っていて面白かったなー。
とにかく「書店員目線」が本気。ここに関してだけは異世界を舞台にする必要はまったくないよね・・・(笑)、ちゅうぐらい本気で書店員目線を語ってくれました。
地方でひとつの書店を立ち上げる話としても充分成り立つと思うのに、そこを敢えて異世界トリップにしてるのは、このレーベルが
「異世界トリップものである」
ちゅうしばりやからやろうな!
で、読んでて気づいてんけど(やっと)、上記のしばりは
「若い女の子が異世界へトリップする」
ちゅう前提やってんね! 今頃気づいてすんません!! そういえばみんな(そこそこ)若い女性やったわ!
せやけど今回トリップしちゃった蓮ちゃんはどうにも中性的な子らしく、
「あー・・・。著者は、BL畑の方かな・・・」
とか、思った(スイマセン)。
だって、やたら過保護にするジャストワとか、無条件で受け入れてるルーエン・ディーとか、ちょっと不愛想キャラのリヒトが常に蓮ちゃんの周りにワチャワチャいてはって、
「わかりやすいハーレム状態」
なのに、なんで蓮ちゃんがこう、わかりやすいヒロインちゃうんやろう・・・? と、わけのわからん違和感を感じつつ半分ほど読み終えたときに、
「あっ、著者は蓮ちゃんを男子と思って書いてはるんちゃうか!」 (語弊あり)
と、ふと思ってですね・・・。
ちゅうかもう、蓮ちゃんが男子やったほうがいろいろなことがスムーズにいくし、蓮ちゃんがよりいっそう可愛くなる・・・。
そう。そうやねん。著者の書き方やと、
「可愛い男子主人公」
に、しか読めへんねんな(笑)! いや、女子でも蓮ちゃんは可愛いけども。そもそも「白騎士さん」やしな・・・(笑)。
そう思ったら、
「ああ、このレーベルはもしかして『主人公は女子』しばりでもあるんかな?」
と、思えてきて、それはそれでなんかニヤニヤした。
「主人公は女子」しばりでも限界まで男子的な可愛さを出してきはったなっちゅうか。
たまにはこういう芸風でもいいかな。
「異世界カフェ」のリサちゃんはわかりやすく可愛いし、「入れ代わり」の由香子はちょっととうが立っている(ほんま失礼)けど根が可愛らしい人やし。
蓮ちゃんもやや小動物的に可愛いけど、これはどう見ても男子的な可愛さやわ。
うはー、みょうに納得・・・。
・・・ちゅう具合で、読了しました。
「結局、ルーエン・ディーの正体は何やったんやろ」
と、思った矢先にエピローグで種明かしをしてくれはったので、わりとスッキリ読了できたかも。
それでもそのルーエン・ディーの「穢れ」だとか黒一色を纏う真意とか、「白騎士」って何なのとか、ジャストワとミカジがなぜここまで蓮ちゃん(と、いうか「白騎士」)に固執するのかとか、そもそも
なんでここまでカエル推しなのかとか
色々疑問は残っている。
正直、書店以外のファンタジー要素はネタ振りだけで1冊が終わられてしまったので、ものすごい面白かったかといえばそうなのかどうなのかよくわからないけれど(ファンタジーの面白さは1冊ではまったくわからない論で)、次作も借りてみようと思う。
ちゅうか、ちゃんと続きがあったことも驚いたし、それが蔵書にあったのも驚いた。
ありがとう、ありがとう。色んなことにありがとう。
「ものすごい面白かったかといえばそうなのかどうなのかよくわからない」ちゅうのは、「面白くなかった」ちゅうわけでは決してなく、ファンタジーの世界観もキッチリ書き込まれてるし、パラレルワールドへのトリップじゃなくて、他銀河へのトリップというのが目新しくてよかった。いわゆる「異星界」?
こういう世界観は、宮沢賢治の世界だよね!! さすが、読書の歴史が長そうな著者(わからんが、間違いなくそうやろうと思う)やなあと思った。
文章もしっかりしているし、読みやすい。
「ここらへんのこの表現がちょっとなあ・・・」
と、悪い意味で立ち止まることもなければ、逆に
「この表現はすごいな・・・」
と、しみじみ見返してしまうこともないくらい、さらさらっと読めた。
正直、設定と世界を作り込んでくるファンタジーの序盤は、作中の設定に集中したいのでこのくらいサラッとしているほうが私は好きだ。
登場人物も魅力的やし、案外マジメな異世界トリップファンタジーなのかもしれへん。
ますます、次作に期待してみよう。そしてこの世界観を忘れないうちに、早く続きを読もう。笑
竜も出てくるんやから、ファンタジーの王道ですやんね。
ほんで、名前がひじょうに変換しにくいねんけど、これってロシア風の名前?
ひくつではないけれど、わりと自己評価がさっぱりしている蓮ちゃんに対して、ルーエン・ディーが
「あなたが自分自身を信じられなくても、あなたを信じる僕を信じればいい」
と、いうたのは、いいなあ、と、思った。
私もこんなことをいわれてみたい。・・・し、いってみたい。
書店開設に追われていて薄れがちやったけれど、蓮ちゃんは「自分は何者なのか」「白騎士とは何か」と、いうことを掘り下げるのに本能的な恐怖を感じてるわけやね。
無難に、当たり障りなく生きてきた自分には「白騎士」という責任は重すぎる、と、いうところなんかな。
ここらへんをウジウジ悩まれると読んでいて億劫になるんやけど、さらっと流されてもそれはそれで
「馴染みすぎやろ!」
と、ツッこみたくなるかもしれへんので、今後このさじ加減に期待。
でも、ノーリスク・ノーリターンで生きていることに慣れてしまったら、ハイリスク・ハイリターンってほんま怖いよね。(;^ω^)
その気持ちは、わかる。
やっぱり自分を信じられへんし、でも、それでもやっていかないとあかんときに私はどうしたかって、
「私が好きで尊敬する〇〇さんが、私のことを▽▽と評価してくれているんやから、大丈夫」
やったわ。
結局、他人に信じさせてもらわないと自分を信じることができひんねんね。
そういうのって、弱さなのか優しさなのか、どっちなんやろう。
(2016.11.05)
- 感想投稿日 : 2017年1月21日
- 読了日 : 2016年11月5日
- 本棚登録日 : 2017年1月21日
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