疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

  • 中央公論新社 (2007年12月1日発売)
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感想 : 67
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世界中で長く読み続けられている中公文庫の「世界史」を書き上げたマクニールが、『疫病』という観点から歴史を紐解いた本。


最近文庫化して中公文庫「世界史」の隣においてある「銃・病原菌・鉄」と似たテーマであり、病気というものが如何に人類に影響を与えてきたのかがよく分かる。


人類を最も多く殺したのは事故でも戦争でもなく「病気」であり、これが常に戦争の結果や文明の運命を大きく左右してきた。


スティルバーグ監督の映画「宇宙戦争」の最後に、酸素が原因で侵略者達が滅亡するシーンがあったと思うが、人類は他の地域から侵略を受ける度に、お互いの病原菌を運んで大打撃を受けてきたのである。免疫力というものが古来の戦争には非常に大きな勝因であるらしい。


よくも悪くも人口を抑えてきた疫病だが、最近はかなりの種類を滅してきたかのように思える。しかし、アフリカ大陸を考えてみるといい。未だに野生の動物が数多く暮らす彼の大陸は、動物が駆逐されない範囲で生態ピラミッドが成立していることを表す。つまり疫病が人口増加の制約として機能しているということだ。


人口が多くなるほど、新たな疫病が広がる確率が高くなる。少し前に起こった鳥インフルエンザもその一つだ。人類の未来を考える上で、唯一の天敵を学ぶことの有意をこの本は教えてくれる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年5月6日
読了日 : 2012年5月6日
本棚登録日 : 2012年5月6日

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