青々と力強い海に囲まれた日本の南の小島“歌島”を舞台に、若くたくましい漁夫・新治と美しい少女・初江が織り成す恋模様。
初めて目にした時から相手のことばかり考えてしまう初恋の戸惑いや、並んで歩くだけで胸が高鳴り続ける様子など、純朴な青年と可憐な少女の瑞々しく、そして真っ直ぐな想いが見て取れます。しかし閉鎖的で大人の意向が絶対だったこの時代、二人の仲に様々な試練が舞い込むことに…。
荒れ狂う海を相手に雄々しく向かう新治、彼を案じながらも凛と構えた初江、時に穏やかに時に猛威となる海など、人や自然の持つストレートな美しさが光ります。二人の仲を邪推して割って入ろうとする安夫の分かり易いまでの悪役っぷりが、ますますこの二人を眩しく穢れのないところまで押し上げているように思います。
三島由紀夫が古代ギリシアの散文作品から着想を得たという本作。
毒素ゼロ、純愛にして爽やかな風が吹き抜けるような心地よい読後感が残りました。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2015年8月27日
- 読了日 : 2015年6月30日
- 本棚登録日 : 2015年6月27日
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