“WatchMe”という医療分子が大人になった個々人の体内に埋め込まれ、健康状態を常に外部で監視、事前に発見・通知してくれる医療社会。心身に害と見なされた嗜好品は徹底的に排除され、優しさと思いやりの精神が根付いた社会は、健全な精神と健康な体を手にした人で溢れ、まさに“ユートピア”であった。
“わたし”が“わたし”のままでいるために、社会の歯車の一部に組み込まれないために、少女3人は餓死することを選択する。それから13年後。当時“死に損ねた”主人公・トァンは、医療社会で起こった突然の大量死の謎に、かつて死んだはずの友人が関わっていると推測する-。
健康な身体。安定した精神。人が人を慈しむ調和のとれた世界。そこは果たしてユートピアか。
前作『虐殺器官』と同様、自身の倫理観が根底から揺さぶられるようなテーマです。いつの日か技術がより進化した時、こんな世の中が訪れ、同じような事態に悩まされる日がくるかもしれない。SFなのか、はたまた近未来なのか、そう思わされるほど現実味があります。
十代に読んでいたらもっと別の衝撃がありそう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2013年12月2日
- 読了日 : 2013年12月1日
- 本棚登録日 : 2013年11月26日
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