証拠死体 (講談社文庫)

  • 講談社 (1992年7月3日発売)
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感想 : 73
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美人の売れっ子作家ベリル・マディソンが殺された。
死体に残った傷痕は、襲ってくる犯人に彼女が必死に抵抗し、
命乞いをしながら死んでいったことを物語っていた。
彼女の部屋から発見された二通の手紙からは、
謎の脅迫者に怯える彼女の様子が読み取れた。
彼女はなぜ、追い詰められた精神状態にありながら、
やってきた犯人のために、無防備にもドアを開けたのか、
そして何よりもまず、なぜ殺されなければならなかったのか。
バージニアの検屍局長であるケイ・スカーペッタと
警部補のマリーノが捜査を進めていくと、
ケイの元恋人であるマークや、有名作家のハーパー、
ベリルの後見人を務める悪徳弁護士スパラチーノ、
自動車洗車場の従業員アル・ハントなどが
事件に複雑に関わっていることが判明し、
様々な人間の思惑の中で、ケイは翻弄されていく――。

検屍官ケイ・スカーペッタが主人公となるシリーズの第2弾。
原題「Body of Evidence」。

デビュー作「検屍官」では、持っている知識をフル活用し、
作品に圧倒的な説得力を持たせることに成功した著者が、
シリーズ化をはっきり意識して書き上げた作品、という印象。

コンピュータや法医学についての専門的な話は少なくなり、
それ以外の、ストーリー構成などに重心が移され、
より“小説”らしい作品という趣が強くなった。

登場人物たち、特にケイとマリーノの2人の
キャラクターが非常にしっかりしているので、
ストーリーの運びがとても自然で受け入れやすい。

また、抑制の利いた文章が相変わらず上品で良い。
展開自体がそもそも適度にオフビートではあるのだが、
よりオフビートに感じさせる効果を文章が担っていると思う。

夜を徹して一気に読み終えたくなるような、
強烈なインパクトを持った作品ではないが、
途中で読むのをやめたくなる瞬間はまったくない。
もしかすると、“小説の力”を持った作品というのは
こういう小説のことを言うかもしれない、と思った。
この後の作品も定期的に読んでいきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: パトリシア・コーンウェル
感想投稿日 : 2012年5月7日
読了日 : 2008年3月7日
本棚登録日 : 2012年5月7日

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