高校時代以来、10年以上ぶりに読み返しました。
神経衰弱や失恋など、高校生の私にはいまいちピンと来ないものでした。
確かに気持ちが塞ぎ込んだり、叶わなかった恋をしたりはありましたが、その結果「死」を選ぶ理由というものが分からなかったのです。
おそらくですが、そのときの私は「K」に感情移入しようとしていたのだと思います。
そして懸命に理解しようとしていたのだと思います。
しかし、月日が流れ、多くの人間と触れ合ってきたことにより、一人ひとりが「何と言われようとも変えられないポリシー」というものを持っていることを知りました。
Kの場合は、「精神」や「精神的な向上心」などですが、それは私の中ではそれほど重要視されていないものだったので、Kの心も理解できなかったのだと思います。
逆に今の私は、「先生」の心がとても理解できました。
目先の欲望を抑えることができず、成し遂げることによって一時的な満足感は得られるが、あとで取り返しのつかないことをしてしまったと気付いてもそれを打ち明けることができない…そんなことはよくあります。
ましてや先生は、懺悔すべき相手を亡くしてしまったのだから、悔やんでも悔やみきれない気持ちになるのは当然です。
奥様の「Kさんが生きていたら、貴方もそんなにならなかったでしょう」という言葉が、どれほど残酷に先生の胸に刺さったかを思うと、とても辛いです。
でも、これは誰にでも起こりうる悲劇なのです。
時代こそ違えど、夏目作品は古くなることを知らないと痛感しました。
さて、10年後、20年後の私は、この本をどういう風に読むのでしょうか…。
- 感想投稿日 : 2015年1月3日
- 読了日 : 2015年1月3日
- 本棚登録日 : 2015年1月3日
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