天使はブルースを歌う―横浜アウトサイド・ストーリー

著者 :
  • 毎日新聞出版 (1999年10月1日発売)
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感想 : 4

戦後の横浜の辿ってきた道が肌で感じられる、読み応え充分の一冊でした。メインとなっている話は白塗りの娼婦「浜のメリー」と伝説のGS,ゴールデンカップス。そして、根岸外人墓地に葬られた混血の嬰児たち。敗戦の悲劇と復興の中での、怒涛のような時代の変遷が描かれ、そこが一番面白かったところでした。山崎さんは団塊の世代。戦後になってガラッと変わった価値観に親の世代がジタバタ抵抗し、子どもたちを堅苦しく縛ろうとしているあたりが妙に新鮮だった…。親たちは、終戦までは、女性に参政権がなかった世代で、これは知ってたはいたけど改めて考えるとなんて時代だったんでしょう・・。もし戦争に負けていなければ、その後もずっとなかったのかも。で、そんな時代を過ごしてきた親の世代とアメリカの価値観がどっと入ってきた戦後生まれの山崎さんの世代が語る言葉は違って当然だったんだなぁ、と。メリーさんに関しては、偶然だけど、映画「ヨコハマメリー」を先に観てしまっていたので、正直、目新しいことはなかった。読みながら、映画の映像が浮かんできてしまったのは仕方ないよね。ただ、カップスについては、ずっとエディと気まずい思いをしながらもインタビューさせてもらえていたおかげで、興味深いエピソードがたくさん書かれていて、それが嬉しい、嬉しい。これも映画「ゴールデン・カップス」で観た映像が本を読みながら浮かんではいたけれど、エディの人となりの描き方は(というよりカップス全員の描き方は)丁寧で、暖かく、かつ冷静でとても面白かった。いかに彼らがGSの枠からはずれていたか、いかにカッコよかったか。時さん、ことデイブがカップスを作り、自らリーダーとなりながらも、メンバーをまとめようとは思っていなかった、というのも面白いなぁ。マーちゃんの恋の話もよかったし。根岸の外人墓地に関する役所の事なかれ主義にはあきれるばかり。あれから少しは動いてくれたんだろうか。お金持ちの子ばかり集め、好き放題に音楽をやる!というデイブのもくろみが可笑しかった。(#^.^#)マモルはルックスも大きな要素だったみたいだけど(私、マモルのこと、ハーフじゃない、なんて疑ったこともなかった。でも、デイブも含め、本当に全員ハーフだと思っていた私って純情だったんだね…。)そんな彼も音楽上のことで、舞台の上でメンバーと喧嘩するほど熱いヤツだったとはね。横浜は敗戦によって栄え、ベトナム戦争の終結で普通の町になった・・・。それは、あぁ、よかったね、と言わなくてはいけないことなんでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2009年12月22日
読了日 : 2009年12月21日
本棚登録日 : 2009年12月22日

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