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硫黄島の星条旗 (文春文庫)についてのsayさんのレビュー


硫黄島の星条旗 (文春文庫)

著者: ジェイムズ ブラッドリー ロン パワーズ

レビュー by sayさん

ジャーナリズム・ノンフィクション   読み終わった  読了日 : 2011年08月17日  3

ペリー提督の航海誌と平行して読んでいるせいもあるが、まず感じるのはアメリカ人の
自分たちが正義で世界のリーダーであるという考え方だ。
相手の土地に踏入り、自分たちで勝手に名前をつけ国旗を掲揚する。
自分たちの要求を押しつけ、通らないなら武力行使に出るとはっきり明言する。
江戸時代から、おそらくその前から、ずっと変わらない自信に満ちたアメリカの姿。

アメリカでは兵士は国を守った勇気ある英雄と扱われる。
戦時中は勿論、戦争が終わった後でも讃えられる。
しかし日本では、責められる。
残虐行為だ、侵略戦争だと責められ、
国の命令で仕方なかったのだからあなたも被害者だと言われ
どちらにしろ報われない扱いだ。
この違いは、勝者か敗者の違いなのか。お国柄だけの違いだろうか。

この違いとは逆に、人の愚かさは国境には関係ないのだなということも感じた。
地獄のような状況で必死に戦い、ただただ必死だった。
自分はたまたま戻ってきただけで、本当の英雄はあの場所で雄々しく戦って散っていった。
そんな”英雄”の声を、誰も聞こうとはしない。
観衆が聞きたい言葉ではないからだ。
勇ましく常に英雄であって欲しい。観衆の幻想を押しつけ、つきまとう。
若者達のその後の人生まで狂わせたのは、単に戦争が全て悪いという話には留まらないだろう。

筆者の父がどうしても日本に来るつもりになれなかったことは、想像に難くない。
仲間が酷い目に遭わされた。
それをした人間と息子の友人達が同じ人間ではないとわかっていても
あからさまに日本を嫌うことはしない人だったとしても
日本と聞いただけで脳裏を過ぎる辛い光景を打ち消すことは十数年経っても難しいことだったろう。
ただ、もしもそれでも彼が日本に来たとしたら
もしかしたら何かどこかで軽くなるものがあったかもしれないと思うと悲しくなる。

また、硫黄島の戦闘においての記述でところどころに栗林閣下の名前があがる。
悲壮な戦いに胸が痛くなる。

”歪められた武士道”という言葉を、正直に言えば『外国人』に言って欲しくないというのが自分の個人的な印象である。
日本人でもそうした言葉を使い、それによってあるものを讃えあるものを貶めようとする人
(まったく他意もなく人に言われてそうだと思いそのまま使う人もいるが)
がいるが、
『武士道』たるものを履き違えての発言であることが多く、よく悔しい思いをする。

筆者は日本人の友人もおり、日本という国を比較的理解している人ではあろう。
しかしどうしても歴史観等について疑問に思う部分がある。
その点については訳者が、抑えた言葉でたった数行で簡潔に書いておられた文章を読んで
やや溜飲を下げた。 登録日 : 2011年08月17日 10:38:36


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