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sayさんの本棚 > ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編


レビュー by sayさん

小説   読み終わった  読了日 : 2008年02月26日  4

新しい自分。
フィクションの世界には良く出てくる表現だ。
九死に一生を得た人などもよくそういう言葉を使うけれど、実際たった一瞬や一晩で新しい自分になれるというのは滅多にないことだと思う。
そう簡単に新しい自分を手に入れられることがとても羨ましい。新しい自分に見合った名前を自分で探すなんて素敵なことだ。
実際問題呼称程度の名前なら自分で考えることもできるだろうが、
カラオケの会員証を作るのにも身分証明がいるような昨今ではそれすら難しい。

以降ネタバレ。
クミコが出て行ってしまったことは、少なからずショックだった。
ただ、彼女が料理と買物の件でトオルと喧嘩をしたときのことを思い返せば、納得がいくようにも思う。
たとえ愛していてもその気持ちに迷いがあるとき、些細なことでも気になって悲観的になり、
相手からすればただの八つ当たりにしか見えない態度をとってしまうのが女ではないだろうか。
彼女のその時既に好きな人がいさえしなければ、特に気にならない、
気になっても喧嘩にまで発展する必要性のなかったことだ。
ただ置手紙だけですませてしまうというのも酷い話だ。いくら彼女が離婚を決めていたとは言え
話し合っても意思が覆らないとは言え
ふたりの問題なのだから面と向かって話し合うのが誠意というものではないのだろうか。

そしてまた、彼は彼で戦っているとは言え、井戸の中に入るというのもすごい行為だ。
理解できるすれすれの行動だろう。
確かに間宮中尉の話があったからこそ、なにかを考えたり見つけたり失ったりできるのではないだろうかと、考える気持ちは分かるのだが。

個人的には、トオルはクレタ島へ行くべきだったと思う。別にクレタと共にでなくとも、クレタ島以外の場所でもいい。
ただ、彼女の言うようにそこにとどまっていてはいけなかったのではないだろうか。
圧倒的な不在感の中で、ただ待つという行為は精神を疲弊させる。
丁度、『N・P』で翠から手紙が来た直後の乙彦と同じだと思う。

時間を丁寧にかけることがある種の洗練された復讐である、という感覚は非常によく理解できた。
トオルは何にどうやって復讐するのか。それを見つけなければならないだろう。 登録日 : 2008年02月26日 08:38:58


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