車谷さんは虚実織り交ぜ、その境目をぼやかすのが上手い作家さんなので、
全編私小説のような気もするし、創作をそう見せかけているような気もする。
どの話も自身の業火に悶え苦しむ人間たちが、大空を仰ぐ事なく、
鍋の底のような狭い世界で蠢いていた。
重苦しいものばかりだが、似たような話をここまで繰り返されると、
愚かで滑稽な人間に、なんだかおかしみが湧いてくる。
突然の訃報に接し、作品を読みながら故人を偲んだ。
この方にしか見えないこの世界をまだまだ書いてほしかった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
カ行
- 感想投稿日 : 2015年5月24日
- 読了日 : 2015年5月24日
- 本棚登録日 : 2015年5月24日
みんなの感想をみる