思い出のマーニー (新潮文庫)

  • 新潮社 (2014年6月27日発売)
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感想 : 131
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映画を見てから読んだので、映画版と原作の違いがくっきり浮かび上がってきた。
もちろん、どちらも、思春期の入り口にいる女の子の繊細な感情を見事に描いているのだが、原作はイギリスの女の子、映画は日本の女の子、ということで、そのメンタリティの違いがとても興味深かった。
映画の杏奈は、「自分は普通じゃない」というヒリヒリした気持ちにとらわれていて、だから誰からも好かれていないのだと思っている。それは傍から見ると被害妄想のようにも見えるし、なぜそこまで頑なになってしまうんだろうと、痛々しく感じられるのだが、原作のアンナはもう少し積極的な感じがした。自分の方から他人を拒否しているのだ、という強い気持ちがあるようなのだ。だから、「あえて」一人でいる。
物語のクライマックスとも言える「マーニーがアンナ(杏奈)を置き去りにした(ように見える)事件」での、杏奈(アンナ)の反応は、似ているようで、でも少し違う。原作のアンナは「私を置き去りにした、という裏切りが許せない」と怒るのだが、映画の杏奈は「ひどいよ」と嘆くのだ。
後半のプリシラとの出会い編は、いかにも外国の児童文学という感じで、遊び方や付き合い方が、「赤毛のアン」を思い出させる。日本の子はあんなふうな付き合い方はまずしないだろうなあ。
小説は、幻想的で、かつ微笑ましい少女の成長物語である。先に読んでいたら、映画の印象もまた変わったかもしれないが、舞台を日本に移したことで、とても良く似ているんだけど、微妙に違う「日本の少女」の物語になっていて、ヒリヒリ感は映画の方が強かった。
いちばん大きな謎も、小説の方だとわりとあっさり扱われているし。映画ではとても重大なこととして描かれていたので、そういうイメージで読んでいたら肩透かしだった。
ああ、でも、これは、12才くらいのときに読みたかったなと思う。リアルタイムで疎外感を味わっている時に読んだら、どんなふうに感じただろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新刊
感想投稿日 : 2014年7月25日
読了日 : 2014年7月22日
本棚登録日 : 2014年7月25日

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