ビル・クリントンは、日本ではなぜかモニカ・スキャンダルの方が有名だが、万年野党になりつつあった民主党に政権を取り戻し、1990年代の国際紛争を幾つか解決に導き、冷戦後分断しつつあった世論を辛うじて繫ぎ止め(ようとし)た凄腕の大統領である。
その自伝が本書であるが、本書の価値は単なる自伝にとどまらない。幼い時から政治に興味を持ち、大学生の時には同氏の名を冠した奨学金で有名なフルブライト上院議員の元で働くなど、長らく政治を観察していた。公民権拡大という当時先進的だった政策を進めつつも、外交ではベトナム戦争で泥沼に陥らせてしまったジョンソン政権への期待と落胆に始まり、社会の分裂や民主党の低迷を見渡す。著者の視野は流石であり、ニュー・デモクラットと呼ばれる自身の政治的立場への道筋が、自身の過ちも含めて極めて明瞭に語られる。
しかし、自身が大統領に近づくにつれてその記述の視野は狭くなってくる。政敵である父ブッシュについてはほとんど悪口である。前半が本当に面白い分、そこが非常にもったいない。
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- 感想投稿日 : 2016年1月23日
- 読了日 : 2016年1月23日
- 本棚登録日 : 2016年1月23日
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