日本占領史1945-1952 - 東京・ワシントン・沖縄 (中公新書 2296)

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  • 中央公論新社 (2014年12月19日発売)
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アメリカの占領政策を政府、国会、官僚、市民運動家はどう捉えたか。
終戦前は大政翼賛会という形ではあるが、紛いなりにも国会は存続していた。終戦直後彼らが引き続き国政を担ったが、当然ながら急進的な占領政策を受け容れることはできなかった。
一方で、農地改革の前提となる小作人の窮乏は戦前から農水官僚らによって認識されていた問題であり、婦人参政権も平塚雷鳥らによって主張された問題であったと言う点で、戦前からの懸案を占領を背景として一掃したに過ぎないという見方もできる。
しかし、リベラルな占領改革はそういった人々の常識を超えていた。農地改革はより徹底して行われ、大企業は解体されようとした。一連の改革は片山哲社会党政権時にピークを迎える。
これらの改革は長続きするものでもなかった。アメリカからしてもこの改革は十二分にリベラルであり本国の反発が増大した他、吉田茂を中心として日本からの反発も強くなる。結局サンフランシスコ講和=日米安保という形で、自民党「保守」政治が形成されていく。

思うに、占領改革とその後の逆コースなど保守反動は一体であった。占領改革は日本における政策の選択肢を広げ、その後吉田茂らによって取捨選択が為された。そうして戦後体制が作られて行った。
終戦直後、という今でも(今だからこそ)真偽不明の怪情報が飛び交う時代について、抑制的に描いた参考すべき著作。

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感想投稿日 : 2015年8月24日
読了日 : 2015年8月24日
本棚登録日 : 2015年8月24日

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