愛国者は信用できるか (講談社現代新書)

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著者 : 鈴木邦男
iamgolgo13or007さん 政治   読み終わった 

 ワールドカップがやってくるとナショナリズムが高揚する。愛国者にとってはまさに至福の時だろうし、自称左翼の方々には日の丸の旗が観客席を埋め尽くしているさまに眉を顰める御仁もあろう。しかし、いずれにしても私たちはきちんと愛国心について考えることを避けてきたのではないだろうか。その一方で、愛国心に反発を覚えつつ、ぬくぬくと「この国」の慈愛の中で日々の平安を満喫している人もいるのかもしれない。
 それはさておき、世の中には自分は愛国者だと言いつつ、実際は不忠者が多々いるようだ。記憶にあるかどうかわからないが、日の丸・君が代を無理強いしようとして「強制しないように」と天皇にたしなめられた某自治体の教育委員なんぞはその典型のようなものだ。ただただ自分の卑小な生育史の呪縛から逃れられないやつ(換言すれば、自分の都合のいいようにしか社会を見てこられなかった人々)であろう。もっともこうした人間は自称左翼の中にも多々いるようだ。
 ところで、くだんの教育委員、もとい将棋差しがただその生育史の中において純朴に日の丸・君が代大好き人間であったからということで某知事の覚えめでたく教育委員になり、自分の小さな世界観を一千万の市民に押しつけていくという姿はどう見てもこの国をよくしていこうというふうには見えない。天皇がその愚かさをたしなめたのはまさしくこの国を思う天皇の見識であろう。その点からみてもこの教育委員とそれを雇用し、日の丸・君が代を強要している某知事などはまさしく不忠者ではないのだろうか。
 不忠とは愛国者ならば国家に対して背信行為をするということである。もとよりこの国を天皇制国家と信ずる天皇主義者ならば天皇の望むところにそわない奴等である。古より天皇は何より民の平安な暮らしを望んだと言う。ならば国民を戦場に駆り立てる者ども、威嚇的な街宣車で恫喝していく者ども、言論を力で抑えようとする者ども、愛国心を強制する者、君が代斉唱を強要する者は皆不忠者と言ってよいのだろうと思う。
 それならば忠なる者とは誰か。おそらくは愛国者であるにちがいない。そしてなんと言っても愛国心といえば右翼だ。それはまっとうな右翼にちがいあるまい。ということで本書は右翼団体一水会の代表鈴木邦男による愛国者と愛国心についての提言だ。この人は元日本赤軍の連中と友誼を交わし、日教組委員長と対談したことで物議を醸すということで耳目を集めてきた人だ。愛国心についてもその立場での見識を持っているであろう。ということで、本書は世の腐敗した右翼もどき・似非愛国者たちのみならず、愛国心について考えたこともなく愛国心通信表を見過ごした左翼もどきにも是非読んでもらいたい本だ。
 鈴木邦男は暴走した愛国心や強圧的に押しつけてくる愛国心を嫌う。他人と他国を愛さない、自己愛と自国愛でしかない凶器としての愛国心をまずは嫌うのである。そしてどうしたら愛国心を暴走させない、凶器にさせないかを本書を通じて考えようとしている。
 例えば鈴木氏は拷問死したプロレタリア作家小林多喜二が仁徳天皇と同じように民の幸福を願っていたということを指摘する。そして彼を国家の名において虐殺した特高こそが自己愛と自国愛しか持たない似非愛国者であり、不忠者だったかもしれぬというのだ。
 本書のキーワードは「愛国と憂国」に尽きる。憂国ってわかるかなぁ。その辺を読み解いていくと愛国心を押しつけたり、愛国者であると傍若無人の振る舞いをするやつらが不忠者であることがよくわかる。そういうふうに考えれば御上の真意を理解しない中間管理職って多いだろう(中間管理職っていうのは天皇と下々の中間にいる管理職ってことだから、総理大臣から教務主任までを含む)。また、愛国者気取りで恩師が左翼だからといって非難してまわっているコンドーくん(誰?)やらも不忠者だし、組合嫌いの自称体制派教師も不忠者だろうね。何しろ陛下はそんなことをお望みではないだろうから。
 そんなわけで鈴木邦男は憂国を主張する。この国がもっとよき国であるように現状を憂える。腐敗した似非愛国者の横行を憂うのだ。
 もっともあちきが忠義者だとは言わないが、列挙した不忠者よりはまっとうな生き方をしているとは思う。何しろこの国を不忠者が跋扈している時勢を憂いているのだから(憂国だ!)。

☆☆☆☆ 不忠者必読のわかりやすい愛国心入門書だ。その稚拙な自己チュー的愛国心を洗い直せ!なんとなくあちきも右翼になったみたいな気がしてきた。そのくらいこの人は真面目に愛国心について考えているのだ。似非右翼よりも、似非左翼よりも、そして似非人権主義者よりも。(嗚呼!憂国的になってきたわい!)

レビュー投稿日
2010年4月5日
読了日
2010年4月5日
本棚登録日
2010年4月5日
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