少年時代 (1) (中公文庫―コミック版)

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著者 : 藤子不二雄A
iamgolgo13or007さん マンガ   読み終わった 

 もう一つ学童疎開の本で~す。著者はあの藤子不二雄A。モチロン漫画ですよ。藤子氏は柏原兵三の長編小説『長い道』を読み、その全く同じ疎開体験(同じ年齢で隣の村に疎開していたのだという)に触発されてこの漫画を描いたのだそうです。逸見氏は同じ集団疎開を体験した人が一人はそれを「よき試練」と語り、他の一人は「残酷な仕打ち」と語っていることをあげてこの問題の苦い解答にしているのね(『学童集団疎開史』二三四頁)。 
 『少年時代』も同じような課題性を持っていると言ってもいい。冒頭、主人公は三十四年ぶりにかつて疎開していた村の地を踏むのである。物語はそうした少年時代に対する懐古談として展開していくのである。こちらは集団疎開ではなく、縁故疎開であった。縁故疎開では子どもは一人きりで村の子どもたちの仲間に入っていかなければならないのだから、集団疎開とはまた別の人間関係がそこではつくられていく。この本で描かれるのは集団疎開が政策として子どもたちの戦場を作っていったのとはやや異なり、この時代の子どもの社会である。そこで主人公が体験するのは教室の中の権力争いであったり、残酷なまでのいじめであったり、疎開体験を持たないあたしには残酷な思い出にしか見えないのだが、著者のそれはある種の懐かしさをともなった体験として描かれているのである。たぶんその時代の空気が酷薄な人間関係をも「よき試練」として思い出にとどめさせているのだろう。
 そしてそんな人間関係の原点は村の階級性とでもいうものと教室という場が示す教育の問題である。逸見氏が虐待も教育の中に読み込まれてしまっていたことをあげていたが、藤子氏が図らずも描き出してしまったのはまさしく教育の枠組みが作り出したいじめと暴力の構図である。疎開という主人公にとっての一種の極限状況であるが故に浮き彫りにされる世界は現代の教室の構図にもあてはまるのかもしれない。
 そうそう、この本は映画化されているのでそっちも一度見てみるといい。主題歌は井上陽水の歌うあの「少年時代」なのだ。

★★★  こんなにおもしろそうなのになぜ★が三つかって? まず『学童集団疎開』を読んで史実を知ってから読んだほうがいいからだ。活字離れのご時世にちょいとケチをつけたくってね。

レビュー投稿日
2010年4月4日
読了日
2010年4月4日
本棚登録日
2010年4月4日
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