私が私らしくあるために―ソワソワ・ドキドキを育てる34の方法

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著者 : 忍足亜希子
iamgolgo13or007さん 人権   読み終わった 

 要はタレント本なのだ。映画「アイ・ラヴ・ユー」でデビューした女優忍足亜希子のエッセイである。ご承知の方は多いかもしれないけど、この「アイ・ラヴ・ユー」という映画はろう者が主人公で、ろう者の役はろう者が演じる、というポリシーでつくられた作品だ。かつてテレビでろう者を主人公にしたラヴ・ストリーが人気を博したことがある。僕によく似た豊川悦史が主役で、常磐貴子といちゃつくやつで、ドリカムの主題歌が好きだった(そんなことはどうでもいいけど)。しかし、聴者がろう者を演じるというのは基本的に聴者の視点から描かれるのでろう者のイメージが固定化されるようなのだ。そこに聴者からろう者へのあわれみのまなざしが描かれてしまうのだと言う。忍足亜希子ははじめてろう者であることで女優となった人だ。
 短いエッセイ集だから簡単に読めるし、そんなに感動だってしない。障害者が書いたから感動すべき内容でなければならないというのは偏見だ、というのが忍足亜希子の聴者に対する大きなメッセージのひとつなのだ。ごくごくあたりまえのバリアフリー(バリアフリーという言葉じたい忍足は否定的だ)がろうである忍足は語っているに過ぎない。その意味で本書はその題名が象徴しているように忍足自身のアイデンティティであり、セルフイメージを表現しているのだと思う。そして「障害」者と向き合うときかまえてしまう「健常」者のまなざしについて優しく批判する。本書を通じて聴者であり、「健常」者である人間はそのまなざしをもって「障害」者をろう者を差別しているのだろう。
 本書の中でいくつか彼女のライフ・ヒストリーがかいま見られるが、それをもっと知りたければ忍足亜希子『女優志願』(ひくまの出版 一三〇〇円+税)がいい。忍足亜希子のセルフイメージ獲得の全過程がわかる。忍足亜希子が味わってきた苦悩と喜び、悔しさと幸福が叙述されている。例えば屈辱的な雇用条件で採用されたOL時代に出勤拒否になりそうになった苦悩であるとか、バリアのせいにしたかった失恋の体験とか、ピアノを習ったこととか、短大に入って講義を聴く苦心談とか。僕たちは忍足亜希子を通じて「ろう」という生き方を知り、憐れみではなく一つの生き方としての「障害」を知るであろう。

★★★ 僕は忍足亜希子が好きだ。それでいいじゃないか。

レビュー投稿日
2010年4月3日
読了日
2010年4月3日
本棚登録日
2010年4月3日
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