人権の世紀のために―歴史・教育・啓発・運動、そして自分史 (ブックレット菜の花 (6))

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著者 : 川向秀武
iamgolgo13or007さん 人権   読み終わった 

 ウィンズを読んでいて著者の川向秀武氏を知らない人はいないはずだ。えっ、知らない?それはもぐりというものではないだろうか。ご承知のように川向氏は一九七七年に福岡教育大学に着任してから二十三年間福岡のそして九州の同和教育に尽力して来られた。福岡で同和教育にかかわった人間なら川向氏の同和教育に対する知見をまとめて読みたいという思いを持ったことがあるはずだ。なかったとは言わせない。そう思わなかったら福岡で何を頼りに同和教育をしていこうと言うのだろうか。そんな本を待ち焦がれていたあなたのために「ブックレット 菜の花6」として刊行されたのが本書だ。
 本書は川向氏が福岡に来てから今日に至るまでにあちこちに書いてきた文章をまとめたものだ。副題にもあるように部落史であり、同和教育であり、社会啓発であり、解放運動であり川向氏がいろんな場面で発言してきたことがこの一冊で手に取るようにわかる。そして川向氏自身の生き様とでも言うべきものがそれらの発言を綴る一本の糸となっているのだ。
 まず川向氏の志した学問が実は川向氏が出会ってきた教師たちへの「不信」と「憎悪」に端を発していること、そしてその「非教育学」への「こだわり」がエネルギーであることが衝撃的に示される。そして全部で11の川向発言が収録されている。とくに「4 人権思想の歴史を子どもに伝えるために」はそれじたいが史論であると同時に人権教育やその思想を伝えるべき歴史教育の形骸化への痛烈な批判を含んでいて僕は好きだ。「5 抑圧の文字から解放の文字へ」は識字運動についての発言であるがその前提として語られる識字の観点から叙述される教育史の素描は若き日に「小学簡易科論」といった重厚な教育史研究を積み上げていた川向さんの研究者としてのかがやきがにじみ出ていて僕は好きだ。「7 部落の子どもたちの『学力』の背景」は福岡、久留米の実態調査をふまえての分析であり、低学力の克服という課題を背負った人には必読の一節だろう。「8 これからの教育・啓発をどうするか」「9 『いつでもどこでも学べる場』の保障を」「同和問題の解決は、すべての人に」なんかは運動家としての川向さんが出ていて今同和教育にさし迫った課題を抱えた人は飛びつきたくなる内容だ。そして{10 おわりに―どんな出会いも大切に」は単なる「おわりに」ではない。川向さん自身の自分史を語りつつ人間というものについて深い洞察がなされている。この節は毎晩寝る前に必ず読み返している珠玉の一節で僕はいちばん好きだ。さてあなたは……

★★★★ 福岡の教師でこの本を読まないというのはひとつの犯罪かもしれない。

レビュー投稿日
2010年4月4日
読了日
2010年4月3日
本棚登録日
2010年4月3日
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