映画『演劇』が朝日新聞で取り上げられ、内田樹もホームページで絶賛している。この想田和弘監督の作品が気になり、まず『選挙』から観ることにした。
録画したものを編集しただけの作品で、ナレーションもBGMもない。従来のドキュメンタリーとは一線を画しているので「観察映画」と呼ばれているようだ。しかし、観はじめると引き込まれてしまい、2時間があっという間に過ぎる。それもそのはず、素材は60時間に過ぎないのに、編集には10ヶ月かけたとのこと。監督は黒子に徹して表には出てこないが、緻密な構成と計算がなされている。日本の選挙が2時間の映像によってあぶり出されている。本人や支援者は大真面目だが、映し出された映像を観る者(観察者)は笑いを抑えることができない。生の映像が放り出され、後は観る側が勝手に考えろと言わんばかりだ。
滑稽というしかない選挙の舞台裏を見せられると、笑いが止まらず開いた口が塞がらない。しかし、一方で、「こんな形で政治を支える議員が決まっていく日本の民主主義って一体何?」という複雑な余韻が残る。解散総選挙も近いらしい。またこんな風景が日本中に満ち溢れると思うと、楽しみなような、ウンザリなような・・・。
監督はニューヨークに15年近く在住していて、日本の政治をクールに見ている。それが、この作品を面白くかつ刺激的にしている一因であることも、特典映像を観て納得できた。
読書状況:読み終わった
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DVD
- 感想投稿日 : 2012年11月1日
- 読了日 : 2012年10月31日
- 本棚登録日 : 2012年11月1日
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