無名碑 下 (講談社文庫 そ 1-4)

著者 :
  • 講談社 (1978年1月1日発売)
5.00
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 16
感想 : 1
5

話が急展開する終盤。
「それでも道はできる」というブローマンの台詞は意味深だ。タイトルにもなっている土木技術者の「無名」性について、上巻では礼賛しているくだりがあるが、ここではむしろ「無名」であるゆえの空しさ(無力さ)を示そうとしているように思えてならない。すなわち小説全体を通じて「無名」性のもつ二面性をあぶりだしていて、これは今日の土木の本質を鋭く突いているとも思う。

あとがきの一節には、感動して泣きそうになった。
「一つだけつまらぬことを覚え書きしておこうかと思う。今後初めて、私はこの作品が書き上るまでは、できることなら死にたくないような気がしたのである」
…自分の人生のなかで、そんな風に思えるプロジェクトに、いくつ出会えるのだろう!

(上巻に対するレビューはまた別途)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 随筆・紀行文・小説
感想投稿日 : 2015年1月6日
読了日 : 2005年7月
本棚登録日 : 2015年1月6日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする