話が急展開する終盤。
「それでも道はできる」というブローマンの台詞は意味深だ。タイトルにもなっている土木技術者の「無名」性について、上巻では礼賛しているくだりがあるが、ここではむしろ「無名」であるゆえの空しさ(無力さ)を示そうとしているように思えてならない。すなわち小説全体を通じて「無名」性のもつ二面性をあぶりだしていて、これは今日の土木の本質を鋭く突いているとも思う。
あとがきの一節には、感動して泣きそうになった。
「一つだけつまらぬことを覚え書きしておこうかと思う。今後初めて、私はこの作品が書き上るまでは、できることなら死にたくないような気がしたのである」
…自分の人生のなかで、そんな風に思えるプロジェクトに、いくつ出会えるのだろう!
(上巻に対するレビューはまた別途)
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
随筆・紀行文・小説
- 感想投稿日 : 2015年1月6日
- 読了日 : 2005年7月
- 本棚登録日 : 2015年1月6日
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