死者の奢り・飼育 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1959年9月29日発売)
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感想 : 356

 飼育のみの感想。この作者は「子どもの心」を描くのが上手いと思います。それを作品の構造に持ち込むのも上手いと思います。「子どもの心」=「作中の僕」から、大人≒世間の理不尽さ・暴力性を描いていると思います。

 「大人」が「子ども」を囲い込むのが、世間の基本だと思いますが、この作品では黒人兵=闖入者の存在により、「大人」が「子ども」を囲い込むのは変わりませんが、「大人」が自分達の「共同体」・「しきたり」よりも大きい社会的存在に囲い込まれるシーンが度々ありました。村の「共同体」・「しきたり」の癌的存在の黒人兵が、おそらく「大人」が社会的存在に囲い込まれているため、黒人兵をどう処置するか定められない期間(猶予)、特に子ども同士の連帯の中心に黒人兵が存在していました。
 
 これと類似した連帯は、現代でも時々存在すると思います。最も大人が「猶予」を破壊したり、闖入者=黒人兵が騒動を起こしたり、去ると、そこで連帯は崩れると思います。この作品では、連帯が崩れた後、「大人」は、死んだ黒人兵の処置に困り、「子ども」は、黒人兵が残した飛行機の残骸で遊んでいました(新しい遊び)。ここに「大人と子ども」それぞれの残酷さが表現されていると思います。大江さんは、トリックスターを描きたい・そういった人物に憧れているのかな?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月18日
読了日 : 2017年8月18日
本棚登録日 : 2017年8月18日

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