WHIPLASH[Blu-ray][Import]

出演 : マイルズテラー 
  • Sony Pictures
4.14
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本棚登録 : 150
感想 : 31

偉大になりたい野心的でうぬぼれた若者と、偉大にはなれず、密室の中だけでその権力を振るう教師の対立を描いた映画。

監督のデミアン・チャゼルの経験した、音楽学校での体験を基に脚本が書かれている。それもあって、教師のフレッチャーの姿は、観ている人を不快にさせ、嫌悪感と緊張感を抱かせるだろう。俺自身も、この密室の王様の発言にはいちいちイライラさせられた。過剰なまでの叱責、「俺はあえてやっている」という演出を加えたフォロー、繰り返される"my"という発言。私のバンド、私のパート、私のドラム。


でも俺にわからなかったのは、フレッチャーはなぜそこまでネイマンを追いつめる必要があったのか、ということだ。ネイマンの才能に嫉妬したから?偉大になりたいと望みながら、偉大になれなかったことの鬱憤を晴らしている?
フレッチャーの本当の心情は描かれていないのだ。観客はずっと、フレッチャーの発言にイライラし、追いつめられるネイマンを観て気の毒に思い、ラストシーンのカタルシスに溜飲を下すだろう。たぶんそれは正しい。というか、デミアン・チャゼルが狙った通りの反応だと思う。
そしてそのとききっと観客は、自分とダミアンの立場を重ねてみると思う。教師や上司といった「権威」に叱責された過去を思い出し、そういえばあの時は、と思い出して、緊張と嫌悪を感じるだろう。それも、狙った通りの反応だと思う。
でも、なぜ彼はそうしたのか、という本当のモチベーションは語られない。ネイマンが学校を辞めたあと、教師をクビになったフレッチャーと酒場で語るシーンでは、彼が「バードを育てたかった」というモチベーションが語られるが、ラストシーンのJVC音楽祭でそれはぶち壊される。
彼は何がしたかったのか?

それはきっと、権威の側にいたことのない人間にはわからないことだ。きっと、知らんけど、監督は若い人で、ずっと辛酸をなめ続けてきたような、ちょっと鬱屈した人なんだろうな。権威者の小ささを執拗なまでに描いている。嫌なヤツを嫌なヤツとしてしか描かない。

でもそれでいいと思う。

まとまんねえ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年5月29日
読了日 : 2015年5月29日
本棚登録日 : 2015年5月29日

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