レビュー by そのかさん
大手メーカーの総合職として働く女性の29歳から40歳までの”揺れる10年"を描き、運命の不可思議を鮮やかに映し出す…
1990年代、バブルが崩壊し、世の中がめまぐるしく変わっていった時代の話。
「女性」としての幸せ、結婚・仕事・子ども…をめぐる議論は正直あまり理解できなかった。
それは私がまだ子どもだということだろうか。
「運命」をめぐる議論も、押しつけがましく聞こえてすんなり飲み込めなかった。
ストーリーの構成と「運命論」の流れがあまりにもよくできすぎていたから。
それなのに、読みながら涙が止まらなかったのはどうしてだろう。
それはやっぱり、登場人物たちが「運命」としか呼べないような見えない大きな力に翻弄されているからだと思う。
人と人とのどうしようもないすれ違いだとか、過ちだとか。
生と、死のことだとか。
それこそ人間一人だけの力ではどう足掻いても変えようのない現実に直面して、傷つき、涙を流しながらも懸命に自らの運命を見据え、対峙していこうとする登場人物たち。
そんな彼らの姿に自分自身の実現しなかった過去や選べないであろう未来のことを重ねながら読んでいたせいで、
きっと泣けてしまったんだと思う。
設定はすこしドラマチック過剰ではないかと思う。
登場人物も魅力的かと言われればそうでもない。
だけど、大切な本のうちの一つになった。
「冬姉ちゃん、人と人とのあいだには、きっと取り返しのつかないことばかり起きるけれど、それを取り返そうとするのは無理なのだから、
取り返そうなんてしない方がいいんだと私は思います」(p207)
レビュー登録日 : 2011年09月06日
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