推定少女 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2008年10月25日発売)
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感想 : 340
5

衝撃的な小説だった。
大人と子供って何だろう。

すっかり忘れていたあの頃のことを思い出した。
私にも確かに十五歳のころがあった。

何が辛いのか何が嫌なのか全然分からなかったけど、
いつだって漠然と不安で辛くてしんどくて死にたくて苦しかった。
大人になんかなりたくないし、そもそも大人になれるような立派な人間じゃないし、
だからと言って努力はしたくないし、
だけど戦死したくはなかった。

どうしたらいいか分からなかったし、何がしたいか、何になりたいかも分からなかった。
世の中のほとんどのことは嫌いで、
お菓子だけ美味しくて、
バンドの追っかけだけが楽しかった。



「いまこんなに苦しいこと、あとほんの何年かして大人になったら、忘れちゃうのかな?
それで、いいわねぇあれぐらいの年の子、悩みなんてなくて、なんて平気で言えるようになっちゃうのかなぁ?」(p132)



私はまだまだ子供のままだと毎日思っていたけど
よく考えれば十五歳のころからもう十年弱も経っていた。
私はなんとなくうまくやってきて、うまくいろんなことをやりすごして生き抜いて、
年齢だけは大人になった。
そして果たせもしない責任ばかりを押し付けられて、はっきりとした現実のいろいろな事に苦しめられている。
仕事がどうとか、生活がどうとか、お金がどうとか。
何が嫌なのか、自分が何をするべきなのか、はっきり分かってる。
だけど自分の力不足とか気力不足とかその他色々な理由で問題に打ち克つことができなくて、毎日しんどいしんどいと溜息をついている。

ため息をつきながら、毎朝バスで見かける中高生に対して、
ああ、学生は気楽でいいわね、なんて思ってしまっていた、のだ。

私の思春期は知らないうちに終わっていて、私は知らないうちに大人になってしまっていたみたいだ。



でも、十五歳のわたしは確かにあのときあの場所にいた。

私は証、をどこか遠くに置き忘れてきたかもしれないし、
最初からそんなもの私にはなかったかもしれないし、
そもそもわたしは冒険なんてしなかったかもしれないけれど、
十五歳のわたしのことを、久しぶりに思い出してあげることができた。



何度でも言うけど、桜庭一樹?ラノベ作家でしょ?なんて言っててごめんなさい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: *たからもの*
感想投稿日 : 2013年6月30日
読了日 : 2013年6月30日
本棚登録日 : 2013年6月30日

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