終点のあの子 (文春文庫 ゆ 9-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年4月10日発売)
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本棚登録 : 3411
感想 : 334
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痛い痛い、背中がむず痒くなるような現代の女子高校生たちの物語。
自分の高校生時代がチラつくようで、身投げしてしまいたくなる。

中高一貫の私立お嬢様女子高に通う彼女たち。
それなりな家庭に育ち、可愛い制服とブランド物のバッグに身を包み、
世田谷の高校に電車通学。
彼女たちにとって当たり前の日常は、ある程度恵まれた環境である。
そんな彼女たちは守られた環境の中、まだなにものにもなっていない自分は
きっと特別ななにものかになれると信じている。
人とは違うなにものかになりたいと願っている。
登場するすべての女の子たちは若々しい視野の狭さと身勝手さと自意識過剰に満ち溢れていて、でも彼女たちなりに必死に何者かになろうとしていて、その痛々しさに胸が抉られるようだった。

人の目を気にしない個性的な女の子と仲良くすれば自分も特別な存在になれるのではないか。
隣のクラスのあの子のように、夏の間に地味な自分から脱却したい。
派手で美人な自分と地味なグループの彼女、二人でいるのは気楽な筈のに、周りの目がやっぱり気になる。
そして、いつまでも自分は変わった存在だと信じて大人になれない少女。
描き方が本当にリアルで気持ち悪いくらいだった。
周りに対する羨望と優越感の入り混じったよくわからないイライラと焦燥感。

4話目が朱里の物語だったのが意外だったけど良かった。
エキセントリックで自由奔放、周りの目など一切気にしない女の子のように描かれていた朱里は、実は一番子どもで、周りの目ばかり気にしていて、大学生になってもまだ自分は特別な存在だと思い込んで周りを見下していた。
誰よりも先をあるいていたはずなのに、気づけば皆に追い越され、またひとりぼっちになっていく。
最後に救いがあったのがよかったかな。

こういった女子高生を描いた作品って山のようにあるけど、
ここまで痛々しいくらいリアルに描かれたものってあまり出会ったことがなかったので驚いた。
恋愛絡みの話がほとんどなかったのも逆にリアルでよかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: *国内小説*
感想投稿日 : 2013年12月1日
読了日 : 2013年12月1日
本棚登録日 : 2013年12月1日

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