シャイロックの子供たち (文春文庫 い 64-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2008年11月10日発売)
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『下町ロケット』で直木三十五賞を受賞した池井戸潤の金融クライム・ノベル。
~ノベルというカテゴリーの多さが、なんの分野なのなわからないほどすごいw

日本のメガバンクとされる、東京第一銀行長原支店を舞台としていて、いろんな年齢でいろんな職種の行員たちを描いた短編小説。もちろん、その短編小説は全て繋がっている。

部下を悪く言うことで自分の評価をあげようとする最低の支店長、支店の成績を上げ、表彰、自分の出世を第一の目標とする上司、努力するもうだつの上がらない社員、亡き父に代わり家計を支える女性行員、メリットの少ない投資信託を売ることを拒む等、上司にたてつく若手行員。

そんな支店で、現金の紛失事件が起きる。ある女性行員に疑いがかかるが、ふだんセクハラぎりぎりの声かけをしてくる直属の上司に守られる。そんな中、ある男が失踪する。

銀行員でなくとも、社会を生きる人たちが思わず共感してしまうような職場の人間関係、社内恋愛、職場と家庭での立場の違い、上司との仕事へ対する感覚の違い、狂いだした歯車。

ひとつの支店で巻き起こる人間ドラマに引き込まれ、どんどん読み進めていけた。
最低な上司はどこにでもいるし、家庭と職場とのギャップに苦しむ人も多くいるだろう、努力が報われず、結果が出ないことに悩む等、身の回りに起こるようなことを題材にしたドロドロ感と、小説らしいミステリー感を堪能できた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年5月18日
読了日 : 2017年5月18日
本棚登録日 : 2017年5月18日

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