今はもう30年以上昔、大学生になりたての私が当時
好きだった女の子に借りて読んだ本である。懐かしい。
図書館で借りた本の黄ばみ具合がその年月を物語る。
年をとりました。
確かにヒロイック・ファンタジーの一種ではあるが、SFの
要素も含み─と言うか半ばファンタジー半ばSFと言った
方が正解かもしれない─一筋縄ではいかないゼラズニイ
らしい本である。内容に比べて明らかに書き足りない
印象が強かったり、感情移入しにくい小悪党の主人公
だったりと色々と突っ込みたいところは多いのだが、
忘れっぽい私が、30年経っても最後のオチを覚えて
いたことが物語るように、読み応えのある佳品である。
単に光でもなく単に闇でもなく、光あって初めて生じる
闇とでも言える「影」が世界を変えていく辺りに深さを
感じる。そのためにはやはり正義の味方でもなく悪の
権化でもなく、小悪党でなければならないのかも知れ
ない。
翻訳は博覧強記荒俣宏先生。その独特の訳語センスも
この本の雰囲気作りに貢献していると思われ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ファンタジー・SF
- 感想投稿日 : 2015年9月5日
- 読了日 : 2015年9月5日
- 本棚登録日 : 2015年8月30日
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