黒田如水 (新潮文庫 よ 3-19)

著者 :
  • 新潮社 (2013年9月28日発売)
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本棚登録 : 226
感想 : 26
5

 永遠の№2と呼ばれる黒田如水が主人公の物語。登場人物一人一人の心情が細かく描かれており、楽しく読めた。秀吉の如水への信頼感や、人間味あふれる信長の行動と後悔がとっても楽しかった。ただ、如水が秀吉と出逢う所から荒木村重に幽閉され、解放されるまでしか描かれていないのがとっても残念だった。もっと吉川先生の文章で読みたかった。本能寺の変や中国大返しなど面白そうな話題がいっぱいあるのに。

 「三人寄れば文殊の智というが、それは少なくとも一と一とが寄った場合のことで、零と零との会合は百人集まっても零に過ぎない。時代の行くての見えない眼ばかりがたとえ千人寄ってみたところで次の時代を見とおすことは出来ないが、評議となって列座すれば、誰ひとりとして、(それがしは、めくらである)と、いう顔はしていない。そのくせ信念もなければ格別の達見も持ってはいないので、ただ自己をつくろうに詭弁と口舌の才を以てすることになる。従って、評議は物々しくばかりなって、徒らに縺れ、徒らに横道に入り、またいたずらに末梢的にのみ走って、結局、何回評議をかさねても、衆から一の真も生まれず、そしていつまでも埒はあかないという所に陥ちてしまうのだった。」(8ページ)

 この文章は、今の日本の政治家・議会に向けて描かれたものではないか、と思ってしまうぐらい政治における真実を描き出している一節だと思った。国づくりにおいても、戦国時代における身の処遇においても、未来を見据え、決断し、それを実行する事が大切なのであろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2013年10月7日
読了日 : 2013年10月7日
本棚登録日 : 2013年10月7日

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