公共哲学 政治における道徳を考える (ちくま学芸文庫 サ 28-1)

  • 筑摩書房 (2011年6月10日発売)
3.80
  • (15)
  • (22)
  • (21)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 600
感想 : 30
5

 道徳や宗教を徹底的に締め出したが故に、幻滅を呼び起こし、それが、公共問題の道徳的側面を扱わず、公務員の個人的な悪行に注意が集中するようになる。このようにして、政治論議がスキャンダラスでセンセーショナルで懺悔的なテーマになってしまう。日頃のくだらない政治家のスキャンダルはこのように生じて行ったというのが衝撃的だった。

 また、ハンナ・アーレントが述べた「大衆社会の存立がこれほど難しいのは、そこに含まれる人びとの数が多いからではない。あるいは少なくとも、それが主要な要因ではない。人びとのあいだを埋める世界が、彼らをまとめ、結びつけ、また引き離す力を失ってしまったという事実が原因なのだ」というのは、サンデル教授が述べたとおり的を射ていると思った。これが、衆愚政治であったり、全体主義につながっていってしまう。今日の日本政治がダメな原因の一つなのではないだろうか。

 『これからの「正義」の話をしよう』と『それをお金で買いますか』の元の作品になっている論文集なので、重複した記述や回りくどい言い回しなど、洗練さにかけていた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2013年1月24日
読了日 : 2013年1月24日
本棚登録日 : 2013年1月19日

みんなの感想をみる

ツイートする