ゴンチャロフの三大長編の一つで、デビュー作。
この上なく現実主義的な叔父と、超ロマンチストな甥の両極端の二人を描く。
この両者をユーモアを交えて描くことで、この両極端とも人間として不完全であることというのがテーマ。
甥のアレクサンドルは、田舎のボンボンとはいえここまで浮世離れしているものか、と思わせるくらい、自意識過剰なアツい男。結局彼は都会で現実に打ちのめされ、それを人生の学校とし、最後には現実と折り合いをつけて打算的な人間になるが、ここの流れは特段目新しさはない(色々な挫折エピソードそのものは面白い)。
超現実的な叔父の方は、理性的であろうとし、自分はそうだと信じているものの、時々その土台が揺らぐような場面がちょくちょく挟まれているのが楽しい。
作品のテーマや話の流れは、今となっては目新しさはなく予想通りの展開ではあるが、二人の両極端な思想と感情が炸裂する会話は面白く読ませる。
しかし2つ目の長編『オブローモフ』の面白さには遥かに及ばないと思う。とすると、一番後期の作品『断崖』の復刊がますます待ち遠しくなるのである。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ロシア・東欧文学
- 感想投稿日 : 2010年7月26日
- 読了日 : 2010年7月26日
- 本棚登録日 : 2010年7月26日
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