イスラム教徒はどうしてそういう考え方をするのか、ということが少しわかるようになった気がする。
「イスラム」とは唯一絶対の神アッラーに従うことだが、欧米では「神に絶対的に服する」からイスラムは人間の主体性というものを認めない、理性というものを認めない宗教だろうと思いこむ。著者はこれは欧米の誤解のひとつであると言う(p.57)
この世のすべてのことを神にゆだねるのだから物事の結果をすべて神様に丸投げしている。そういう意味で気楽な宗教なのだ。そもそもそういう楽な面がないとイスラム教徒が増えるわけがない(p.58)…なるほど、と思う
「アラビアのロレンス」でロレンスが案内人の男と旅をしていて井戸の水を飲んだところで、その井戸の持ち主が案内人の男を撃ち殺す場面。こういうシーンがいまだに続く西洋のイスラムイメージを作り上げたと言う。
「沙漠といういわば大海で会った相手に対して、オレのテリトリーに入ってきたな、撃ち殺すぞ、というのはまったくの見当違いの理解であるということは知っておいていただきたい。ここは自分の土地だというのは農耕民の発想です。」(p.64)
ーなるほど。確かにイスラム圏を旅していて、イスラム教徒の人達がとても親切であることは何度も感じてきたことだ。
このほか、ハラール認証のおかしさについての説ももっともだと思ったし、イスラム国が出現してきた経緯についてもなるほどと思うところがあった。
イスラムの規範と近代西欧に生まれた規範のあいだには根本的な違いがある。
「西欧諸国がイスラム世界を啓蒙するのだと言い張り、一方のイスラム世界は、その啓蒙を拒む。結果、テロリストが増えるだけ…。これは、思考の体系が異なるのに、一方をごりごりと相手に押しつければ、相手が変わるだろうというありえない思い込みによるものです。この不毛な連鎖を断ち切らなくてはいけません。」(p.223)
-確かに、まず相手のことをもっとよく知ろうとすることが必要だと思う。
- 感想投稿日 : 2017年5月16日
- 本棚登録日 : 2017年5月13日
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