100万回の言い訳 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年5月30日発売)
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感想 : 188
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<平凡な夫婦生活だけが幸せとは限らない>

この本の紹介を読んだ時、40歳を目前にして、子供を作ろうか・・と悩む主人公、と書いてあったので、タイトルの「100万回の言い訳」は、てっきり子供を作るか作らないか・・迷って迷って、何かにつけ言い訳を考えて結局作る決心をしない主人公の話だと、思っていました。

でも違ったんですね。
言い訳は、別居していた夫婦が、再び同居するまでに、何度も自分に言い訳をしつつ、同居を延期していくというストーリー。

ま、私の勝手な勘違いだったので、唯川さんは何も悪くないですよ。
自分と似た環境にいる主人公に、私が勝手に自分を重ね合わせていただけなのですが、結局最後に「子供はどうなったの?」それが書かれていなかったことだけが少し残念でした。

結局は、結子夫婦だけではなく、結子の両親、「つるや」の老夫婦、隣の部屋の許子夫婦・・・・色んな夫婦のあり方を通して、夫婦とは何か・・を考えさせる物語だったのだと思います。
そして、夫婦には100組いれば100通りの形があり、これが正解と呼べるものはないのだということ。

私は不倫を肯定も否定もしませんが、長年一緒にいることが当たり前となってしまった頃に、こういった夫以外、妻以外の第三者が現れて関係を持つということは、あながち悪いことでもないのでは・・と思いました。但し、絶対に相手に知られないことを前提で、ですが。
きっと第三者がいたからこそ、結子も士郎も、最後にお互いの大切さを再確認できたのだと思います。もし誰も現れず、何も変わったことがなければ・・・もしかしてこの夫婦は逆に別れることになっていたかも。
雨降って地固まる・・とは良く言ったもので、半年の間に、お互い色々あったからこそ、夫婦の良さを再確認し、より絆を深めることができたのではないでしょうか。

全体的には、長編ですが、飽きることなく、どんどん読み進めることができ、軽く読める一冊です。唯川さん独特の、女の嫌らしさや恐ろしさ、などが描かれたクセのある作品でもありませんので、唯川作品を初めて読む方にもお勧めなんじゃないかと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年4月5日
読了日 : 2010年5月4日
本棚登録日 : 2011年4月5日

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