Aではない君と (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2017年7月14日発売)
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息子が殺人容疑で逮捕された父親が主人公のホワイダニット系推理小説。

仕事も恋愛も順調なバツイチ中年吉永のもとに離婚後妻側に引き取られた14歳の息子が友人を殺した容疑で逮捕されたことが伝えられる。しかし、息子はなぜ殺人を犯したのか一言もしゃべらない。主人公で父である吉永は息子とのそれまでの関わり方などを後悔しながら息子のために奮闘していく。


一括りに少年犯罪とはいっても、各犯罪における性質は大きく異ることが多い。非行に走っていたわけでもない息子の翼は、突然殺人という罪を犯してしまう。

こどもは周りの環境、特に家族の影響を受けやすいものである。両親の不仲、離婚、家庭内でのちょっとした出来事でさえ心のバランスを簡単に失ってしまい、その影響は学校や友人関係にも及ぶ。

仕事が忙しい、自分のことで手一杯、大人というのはそこまで立派なものではない、他の人に気を回すことができない時も多い。しかし、事が起きてからでは遅い。そうなる前にきちんと子どもと向き合っていく必要がある。その責任が私たち大人にはある。



「こころを殺すのとからだを殺すのどちらが悪いの」
作中で出て来る翼の言葉だ。人を殺してはいけない。誰もが言われ続けていることだと思う。しかし、なぜ殺してはいけないのだろうか。こころを殺され続けている人は、どんなことをしても耐えなければいけないのか。つらい思いをさせられた人は、何をされても黙っていなければいけないのか。

ことを起こしてからは一生十字架を背負って生きなければならない。反省しているかどうか、ということの意味がわからない。「大変なことをしてしまった。」、「相手に悪いと思っている」。ゴールが決まっている上での議論など何の意味もない。

もちろん理由がある殺人を肯定しているわけではない。しかし、何か違うと私の心が言っている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2017年9月10日
読了日 : 2017年9月10日
本棚登録日 : 2017年9月10日

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