皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)

  • 東京創元社
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感想 : 72
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もしも自分の目の前で殺人事件が起きたなら…。そして、事件の目撃者となった自分に何かやましいことがあって、それを証言できずにいたなら…果ては、それがもとで自らが容疑者として嫌疑をかけられることになったなら…。


婚約者の父親が事件に巻き込まれるところを、向かいの家から偶然にも目撃してしまったヒロインのイヴ・ニール。これから家族になるであろう愛すべき身内の死は、彼女に衝撃を与えます。

しかし、彼女には事件を目撃していたという事実を明かせない特別な事情があったのです。被害者の息子であり婚約者でもある恋人に、余計な心配をかけたくないあまりに、ただ口をつぐむばかり。


子細な情景描写と冷徹な筆致で描かれるシーンの一つ一つが、登場人物の心理的変化を見事に表しています。

男の嫉妬、疑うことをしらない幼気な女性の恋心、ラストに待ち受ける驚愕のトリック。
物語に描かれている全ての事象が、完璧な体を為しているのです。

このたった一つの不可能な犯罪を、犯人はいかにして成立させたのか…

読了後、恐るべき心理トリックに感嘆の声を上げること間違いなしのミステリの金字塔です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2011年9月11日
読了日 : 2011年9月10日
本棚登録日 : 2011年8月23日

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