昭和初期、幕末明治を回顧する風潮が高まったようだ。約60年後、幕末維新が”歴史”になろうとしていたからだ。
”歴史”になろうとするときに、それを体験している人々の話を集め、”歴史”を記録する。人間の知恵なのかもしれない。
本著に取り上げられている諸話は、史実を追う、というものではなく、意識して庶民の、つまり歴史の裏側にスポットを当てたものである。
その意味では、歴史書として時代の意義、繋がりを知ろうとして読むと期待外れになる。
(引用)
・(コレラが流行った際の噂)「浦賀へ来た黒船が置いて行った魔法で、異人が海岸へ来て何か洗ったが、その時のあぶくと言ったら、真っ白なのが一杯、あれが魚の腹へ入って江戸の人やなんかの口へ入ったんで、その白いのが魔法のタネなんです」と詳しく話しましたが、今から考えると馬鹿々々しい。石鹸なんです。
・(生麦事件に際して)異人の談判に対して、「いやそれは幕府の関するところではない。薩藩の仕業じゃ。京都禁裏に係る事だ」と、逃げを張った。これがそもそも幕府の権力が薄くなる根本で、自ら箔を剥がしたも同様じゃ。遂に幕府がこの逃げを張ったため、異人に将軍の上にまた天皇があることが知れた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2012年2月4日
- 読了日 : 2012年2月4日
- 本棚登録日 : 2012年2月4日
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