幕末百話 増補 (岩波文庫 青 469-1)

著者 :
  • 岩波書店 (1996年4月16日発売)
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感想 : 21
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昭和初期、幕末明治を回顧する風潮が高まったようだ。約60年後、幕末維新が”歴史”になろうとしていたからだ。
”歴史”になろうとするときに、それを体験している人々の話を集め、”歴史”を記録する。人間の知恵なのかもしれない。
本著に取り上げられている諸話は、史実を追う、というものではなく、意識して庶民の、つまり歴史の裏側にスポットを当てたものである。
その意味では、歴史書として時代の意義、繋がりを知ろうとして読むと期待外れになる。

(引用)
・(コレラが流行った際の噂)「浦賀へ来た黒船が置いて行った魔法で、異人が海岸へ来て何か洗ったが、その時のあぶくと言ったら、真っ白なのが一杯、あれが魚の腹へ入って江戸の人やなんかの口へ入ったんで、その白いのが魔法のタネなんです」と詳しく話しましたが、今から考えると馬鹿々々しい。石鹸なんです。

・(生麦事件に際して)異人の談判に対して、「いやそれは幕府の関するところではない。薩藩の仕業じゃ。京都禁裏に係る事だ」と、逃げを張った。これがそもそも幕府の権力が薄くなる根本で、自ら箔を剥がしたも同様じゃ。遂に幕府がこの逃げを張ったため、異人に将軍の上にまた天皇があることが知れた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2012年2月4日
読了日 : 2012年2月4日
本棚登録日 : 2012年2月4日

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