足利義政と銀閣寺 (中公文庫 キ 3-12)

  • 中央公論新社 (2008年11月1日発売)
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足利義政の評価は本著最後にある一文に集約されるのだろう。「日本史上、義政以上に日本人の美意識の形成に大きな影響を与えた人物はいないとまで結論づけたい誘惑に駆られる。これこそが義政の欠点を補う唯一の、しかし非常に重要な特徴だった。史上最悪の将軍は、すべての日本人の永遠の遺産を残した唯一最高の将軍だった。」
足利義政の生い立ちから将軍になるまでの史実の理解は勿論のこと、今なお日本文化として生き続ける華道、庭園、茶道等を東山文化に源流とすることを改めての発見できたことは大きな収穫。

京の文化が応仁の乱により、地方まで伝播された事実も興味深い。

以下引用~
・義政の天賦の才は人の才能を見抜く稀有な能力、さらには社会的地位に関係なく才能ある人間を進んで召し抱えるという形で発揮された。
・老子は、「五色は人の眼をして盲ならしむ」と言っている。色彩に気を取られると、物の真の姿を見つけることができなくなるという意味である。一方、墨一色で描かれた絵には、すべての色彩が含まれていると考えられた。
・花瓶の中の花が、芸術の一形式になり得るということに最初に気がづいたのは、足利義政の時代だった。この発見が、花道(華道)芸術を誕生させた。
・この時期の最も有名な二つの庭園は、たまたま今日もなお見ることができるという理由だけでそうなったのかもしれないが、竜安寺と大徳寺大仙院の庭である。
・義政は、単なる優雅な気晴らしに過ぎなかったものに将軍家のお墨付きを与え、儀式化された茶道へと発展させる道を開いたのだった。

以上

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2012年7月23日
読了日 : 2012年7月23日
本棚登録日 : 2012年7月23日

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